へすていあ

フェリー「へすていあ」：室蘭～大洗、そして大洗～苫小牧を結んだ航海の軌跡

「へすていあ」は、かつて日本の海峡を繋いだフェリーです。三菱重工業下関造[[船所]]で建造され、ヘルメス型の3番船として誕生しました。当初は東日本フェリーが室蘭～大洗航路に就航させ、週6便体制の確立に貢献しました。船名は、ギリシャ神話の炉辺の女神ヘスティアに由来しており、穏やかで温かみのあるイメージが込められています。

1988年から運航していた「びくとりあ」と合わせて、室蘭～大洗航路は日曜日を除く毎日運航されるようになり、多くの乗客や車両を輸送しました。この航路は、北海道と関東地方を結ぶ重要な交通手段として、地域経済にも大きく貢献していました。

しかし、2002年6月、室蘭～大洗航路は休止となります。「へすていあ」は、商船三井フェリーとの共同運航体制の下、大洗～苫小牧航路に転身しました。その後、2007年に東日本フェリーが同航路から撤退したことに伴い、商船三井フェリーに完全移管され、船名を「さんふらわあ ふらの」へと改名しました。改名には、全国的な知名度と、親しみやすさ、女性にも受け入れられやすい響きといった思いが込められていたそうです。

「さんふらわあ ふらの」として、大洗～苫小牧航路の「夕方便」を中心に活躍しました。船内には、乗客が快適に過ごせるよう、様々な設備が充実していました。Aデッキにはレストランや展望ラウンジがあり、美しい海の景色を楽しみながら食事や休憩をすることができました。Bデッキにはオーナーズルーム、特等室、二等室といった様々なタイプの客室の他に、展望浴場、ゲームコーナー、マリンシアターなど、エンターテイメント施設も備えられていました。Cデッキには二等寝台、一等室、売店、インターネットコーナー（2013年7月まで）、案内所、そしてペットルーム（新設）があり、乗客のニーズに対応できるよう配慮されていました。

しかし、時代の流れとともに新造船による代替が決定し、「さんふらわあ ふらの」は2017年5月10日、苫小牧発便をもってその長い航海の幕を閉じました。

「へすていあ」/「さんふらわあ ふらの」の運用期間中には、いくつかの出来事がありました。2006年10月24日には、大洗港沖合で高波と低気圧による大しけに遭遇し、乗客3名、乗員4名が軽傷を負う事故が発生しました。また、2011年3月11日には東日本大震災を経験しました。大洗港に停泊中だった「へすていあ」は地震発生後20分で緊急出港し、沖合へ避難した後、苫小牧港へ向かいました。汽笛を鳴らしながら航行したことで、高台へ避難する住民を促す役割も果たしたと伝えられています。大震災による大洗港の被害で、関東側の発着地は一時的に東京港に変更されました。

「へすていあ」/「さんふらわあ ふらの」は、多くの乗客を乗せ、北海道と本州を繋ぐ重要な役割を担ってきました。その活躍は、多くの人の記憶に深く刻まれていることでしょう。長年に渡る航海の軌跡は、日本のフェリーの歴史において重要な一ページを飾っています。

もう一度検索