ヘディング

ヘディング（Heading）

ヘディングとは、サッカーにおいて頭でボールに触れるプレーを指し、英語では「header」とも呼ばれています。この技術は、サッカーが発展する過程で自然に誕生したものであり、プレーヤーが手を使えないサッカーのルールの中で、ボールを扱うための重要なスキルとなっています。

近代サッカーは1863年にイングランドで始まりましたが、当初はヘディングのテクニックは一般的ではありませんでした。ヘディング技術は、シェフィールドルールの下でプレーしていたシェフィールドFCの選手たちによって考案されたと言われています。当時使用されていたボールは革製で、水を吸って重くなるため、その重量感からヘディングは非常に勇気のいる行為だったとされています。

ヘディングの基本技術としては、首を固定し、上半身を使って額でボールに当てることが重要です。ボールが遠くから飛んできた時に、選手が飛び込んで行うヘディングは特に「ダイビングヘッド」と呼ばれています。このプレーでは、守備時はボールを高く跳ね返すことが許されますが、攻撃時には相手ゴールを狙うために、ボールを叩きつけるように下方向を狙うことが推奨されます。この理由は、ゴールポストを越えにくくなることと、ボールがバウンドするとゴールキーパーにとっての対処が難しくなるからです。

ヘディングを使ってシュートを放つことは「ヘディングシュート」と呼ばれ、特にクロスボールやセットプレーにおいてゴールを決める重要な手段となります。そのため、フォワード（FW）やディフェンダー（DF）はこの技術を身につけ、競り合いに強い選手が多い傾向があります。たとえば、オリバー・ビアホフやヤン・コレルのように、身長を活かして空中戦を得意とする選手がいます。また、ウーヴェ・ゼーラーやミロスラフ・クローゼのように、跳躍力によってヘディングの技術を発揮する選手も見られます。

ヘディングの危険性

一方で、ヘディングには注意が必要です。アルベルト・アインシュタイン医学校の研究者、マイケル・リプトン氏は、ヘディングを繰り返すことが脳に損傷をもたらす可能性があると報告しています。また、別の研究では、ヘディングによって生じるダメージがアルツハイマー型認知症を引き起こすリスクを高めることが指摘されています。スウェーデンにあるカロリンスカ研究所によると、トップサッカー選手は一般人に比べて認知症になるリスクが1.6倍高いとされています。さらに、ヘディングの機会が少ないゴールキーパーでさえも、リスクは1.4倍高いことが示されています。

このため、米サッカー協会は2015年に10歳以下の子供に対するヘディングを禁止しました。イングランドやスコットランドも2020年2月から11歳以下へのヘディング禁止を導入しています。日本サッカー協会も、ヘディングの反復が子供の脳に悪影響を与える可能性を認識し、小学2年生までは風船などで代替し、3～4年生までは軽いボールの使用、さらに5年生以上は練習回数制限を設けることを推奨するガイドラインを発表しています。

ヘディングはサッカーにおいて欠かせない要素ですが、そのリスクも考慮しつつ、安全な運用を目指すことが重要です。

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