ベヒモス

ベヒモス：聖書から悪魔、そして現代文化へ

ベヒモスは、『旧約[[聖書]]・ヨブ記』に登場する伝説的な巨大生物です。ヘブライ語で「動物」を意味する言葉の複数形であり、その巨大さを強調した表現であると考えられています。聖書の中では、同じく『ヨブ記』に登場する海に住むレヴィアタンと対比的に、陸の獣として描かれています。

聖書におけるベヒモス

『ヨブ記』では、ベヒモスの圧倒的な力強さと巨大さが力強い言葉で描写されています。その姿は、カバやサイといった大型動物を想起させ、古代の豊穣の象徴と関連付けられたとする説もあります。日本語表記は「ベヒーモス」「ベヘモト」など複数存在し、聖書翻訳によっても「河馬」と訳されるなど、解釈に幅があります。

ユダヤ教の伝承では、ベヒモスはウシとされ、「野牛」を意味する言葉で呼ばれることもあります。また、レヴィアタンとの関連性も深く、両者は世界の終末に激突し、その肉は義人のための食料となるとする説が伝わっています。ベヒモスとレヴィアタンは、地と海、あるいは善悪の対比として捉えられることも多く、様々な解釈を生み出しています。

中世以降のベヒモス

中世になると、ベヒモスは悪魔の象徴として認識されるようになりました。これは、聖書における巨大さと力強さが、悪の力と結び付けられた結果です。絵画などでは、象や象頭人身の姿で描かれることも多く見られます。この悪魔としてのベヒモスは、暴飲暴食や強欲といった悪徳の象徴とされ、七つの大罪のどれかに関連付けられることもありますが、これは後世の解釈によるもので、聖書原本とは直接的な関連性はありません。

現代におけるベヒモス

現代においても、ベヒモスは文学や芸術作品などを通して様々な解釈がなされています。政治哲学者トマス・ホッブズは、自身の著書『ベヒーモス』で、イングランド内戦下の混乱をベヒモスに喩え、社会契約の重要性を説いています。このように、ベヒモスは、単なる伝説上の生物ではなく、人間の社会や歴史、そして宗教観を反映する象徴的な存在として、現代においても注目を集め続けているのです。

関連文献

ベヒモスに関する研究は数多く存在し、聖書研究、神話学、芸術史など、多様な分野からアプローチされています。これらの文献は、ベヒモスの多様な解釈と歴史的変遷を理解する上で貴重な資料となります。 例えば、ド・プランシー『地獄の辞典』や、松平俊久『図説ヨーロッパ怪物文化誌事典』などは、ベヒモス像の変遷を理解する上で有用です。また、ボルヘス『幻獣辞典』のような作品は、文学的な視点からベヒモスを捉え直す試みとなっています。これらの文献を通して、ベヒモスのイメージとそれが持つ意味の奥深さを理解することができるでしょう。

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