ホンダ・フュージョン

ホンダ・フュージョン：快適性と歴史を刻んだビッグスクーター

ホンダ・フュージョンは、本田技研工業が1986年4月17日に発売したスクータータイプのオートバイです。型式名MF02。当時としては画期的な快適性を追求した設計が特徴で、長距離ツーリングを視野に入れた設計思想が色濃く反映されています。

快適性を追求した設計

フュージョンは、スクーターとしては最長のホイールベースと低シート高を実現。大型の段付きシートと、リヤシート下の大型トランクルームにより、2名乗車時でもゆったりとした広さを確保しました。標準装備されたフェアリングやサイドバイザーは、長距離走行時の疲労軽減に貢献。さらに、二輪車としては先進的なカラー液晶デジタルメーターや、オートキャンセル機能付きウインカーも採用するなど、快適性を追求した装備が満載でした。

エンジンは、ホンダ・スペイシー250フリーウェイからキャリーオーバーされたMF01E型水冷4ストロークSOHC単気筒エンジンを搭載。信頼性の高いメカニズムを継承することで、高い走行性能と耐久性を両立させていました。

多彩なモデルバリエーションと販売の歴史

1986年の発売以降、フュージョンは幾度かのマイナーチェンジを経て進化を続けました。1990年、1992年、1994年、1996年とマイナーチェンジを重ねる中で、タイヤサイズ変更、ホイールの素材変更（スチールからアルミキャスト）、車体色の追加などが行われました。1994年には限定車「フュージョンSE」も発売され、LED式ハイマウントストップランプ内蔵リアスポイラーやレザー調シートなど、よりプレミアムな装備が追加されました。

1997年には後継車種のフォーサイトが登場し、日本国内での販売は一旦終了。しかし、その後、ビッグスクーターブームを背景に中古市場での人気が高まり、2003年に日本国内での正規販売が復活しました。復活に際しては、排出ガス規制への対応やセキュリティ強化策の追加、そしてユーザーの多様なニーズに対応するため、スタンダード、Type X、Type Xカラーオーダープランといった複数のグレードが設定されました。

2003年以降も、マイナーチェンジを繰り返し、Type Xカラーオーダープランの廃止、Type XXの設定、SEの復活など、進化を続けました。2006年には20周年記念モデル「フュージョンSE・20thアニバーサリー」も限定発売されました。しかし、自動車排出ガス規制の強化により、2007年8月に日本国内仕様の生産は終了。その後、輸出仕様車も生産終了となりました。

中国での模倣品訴訟

フュージョンは、1980年代に日本が中国に提供したODA（政府開発援助）の一環として技術支援が行われた背景があります。しかし、この技術支援を受けなかった中国の企業がフュージョンを無断でコピー販売したことから、本田技研工業は意匠権侵害として訴訟を起こしました。一審では敗訴したものの、二審で勝訴。この訴訟は、日本の技術保護と知的財産権の重要性を改めて認識させる出来事となりました。

まとめ

ホンダ・フュージョンは、快適な走行性能と先進的な装備、そして幾多の困難を乗り越えてきた歴史を持つ、名車と言えるでしょう。その人気は、中古市場での高い人気からも伺えます。排出ガス規制などの社会情勢の変化や、中国での模倣品との闘いなど、数々の出来事を経験してきたフュージョンは、日本のバイク史に大きな足跡を残しました。

もう一度検索