ミミズバーガー

ミミズバーガーの都市伝説

ミミズバーガーは、アメリカのファストフードチェーン店がハンバーガーのパティにミミズの肉を使っているという都市伝説です。この噂は、実際にファストフード店で働いていた従業員がミミズ肉を調理する場面を目撃し、口止め料を受け取ったという筋立てが語られて広まりました。特に1978年から1982年にかけて、アメリカ合衆国ではこの噂が広く流布し、主に大手チェーン店への誹謗中傷として注目されました。

このミミズバーガーという話は、アメリカの食文化に対する偏見や反感を反映しているとように考えられています。具体的には、ミミズの肉が不衛生な屑や汚物の象徴として受け取られ、これがジャンクフードに対する批判と結びついているのです。多くの人々がこの都市伝説を真に受け、それが語り継がれることで、ますます神秘的で恐ろしいイメージを持たれるようになりました。

しかし、ミミズ肉を使用すること自体には実際的な問題も多いと思われます。例えば、ミミズ肉は牛肉に比べて非常に高価であり、製造コストは牛肉の5倍にも達します。そのため、もしミミズ肉が使われたとしても、600円から700円以上のコストがかかることになります。このような高コストの調理法では、食堂やファストフード店は競争に勝ち残ることが難しいでしょう。さらに、ミミズの肉を調理する際には、細かい下ごしらえが要求され、これもまたコストを押し上げる要因となっています。

90年代には、サブカルチャー雑誌『GON!』で実際にミミズ肉ハンバーガーが作られる試みが行われましたが、その結果は惨敗でした。読者からは、「食用ミミズの流通ルートが存在しないため、牛肉パティよりもはるかに高くつく」「土を吐かせたり捌いたりする手間がかかる上、味が悪すぎる」と酷評が寄せられました。

一方、アメリカのハンバーガーチェーン店、特にマクドナルドは、この噂に対して反論を試みました。ジャーナリストへの情報提供や、食品の安全性を保証する農家の手紙を受け入れ店舗に掲示するなどの手段をとりました。また、マクドナルドのパティが100パーセント牛肉であるとの情報をテレビ広告でアピールし、消費者に対して信頼を構築しようとしました。

ミミズ肉の噂が生まれた背景としては、実際に挽肉から出てくる素材が「ミミズ」と呼ばれたことが影響しているとも言われています。つまり、この名称の誤解が都市伝説を助長した可能性があるのです。

さらに、文化的な影響も無視できません。俳優の平幹二朗がテレビドラマ『100億の男』の中でミミズが入ったハンバーガーを食べるシーンは、多くの人にミミズバーガーというコンセプトを印象付けるきっかけとなりました。また、1965年にアメリカで公開されたホラー映画『THE WORM EATERS』も日本で『ミミズバーガー』という邦題で公開されたことで、都市伝説が一層強化されたのかもしれません。

このように、ミミズバーガーの都市伝説は、単なる噂話にとどまらず、アメリカの食文化や消費者への影響、そしてメディアの力を考察する上で興味深い事例となっています。

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