やすり

やすりの概要

やすりは主に金属や木材を研削するための手動工具です。その語源は、「やする」と「弥磨」の二つの説があり、どちらも磨くことに関連しています。

歴史

やすりの起源は紀元前2000年頃にまで遡ります。この時期には、ギリシャのクレタ島で青銅製のやすりが発見されています。19世紀に入り、鋼の大量生産が可能になると、やすりの目を立てる機械が発明されました。この機械により、従来の手作業での目立てから大きく進化しました。1864年にW・T・ニコルソンによって特許取得されたこの技術は、以降のやすり製造に革命をもたらしました。

日本でも、やすりの製造は古い歴史を持ちます。岡山県の隨庵古墳や宮城県の東山遺跡からは、奈良時代やそれ以前のやすりと思われる遺物が見つかっています。農村鍛冶の副業として始まったやすり製造は、次第に家内工業として発展し、近代には電動化や圧延機の開発によって大量生産が可能になりました。また、戦前には大阪や新潟、東京にもやすりの産地が存在しましたが、戦後は衰退し、広島県呉市仁方地区が国内のやすり生産の95%を占める拠点として知られています。

種類

やすりはその用途によって、鉄工やすり、木工やすり、ダイヤモンドやすりなどが分類されます。また、やすりの目には「単目」と「複目」の2種類があり、さらに目の粗さや刃の配置によって様々な種類が存在します。例えば、刃の切れ方が平行である「単目」や、交差した刃を持つ「複目」などがあります。これに関連して、爪の手入れに使われる「爪やすり」や、硬度の高い素材を切削するためのダイヤモンドやすりなどもあります。

やすりの形状には、平、半丸、角、三角などがあり、特定の用途に応じた形状が選ばれます。特に、筋状の加工が行える「筋目やすり」や、波状の刃を持つ「波目やすり」といった特殊なやすりも存在します。

使い方

やすりを使用する際は、刃の方向を考慮して削っていくことが基本です。加工中に刃の間に切りカスが詰まることがあるため、その場合はワイヤブラシなどを用いて清掃します。

製造方法

やすりは、熱間鍛造、焼きなまし、研磨、目立て、焼入れという工程を経て作成されます。この中でも、やすりの刃は専用のたがねを使って一つずつ打ち込まれます。伝統的には手作業で行われていますが、現在では機械を用いることが一般的になっています。その際、人間の目視によって目の確認が行われ、製造品質が維持されています。

その他の情報

やすりは、主に炭素工具鋼や合金工具鋼から作られています。また、やすり製造においては焼入れ性を向上させるために、焼入れ時に特殊な素材が使われることがあります。日本国内では、ツボサンや広島鑢製造所などのメーカーが有名です。やすりはその製造方法や種類において、非常に奥深い文化を持っています。

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