ユーラシアカワウソ

ユーラシアカワウソ：形態、生態、そして絶滅の危機

ユーラシアカワウソ(Lutra lutra)は、イタチ科カワウソ属に分類される中型の食肉類です。別名ヨーロッパカワウソとも呼ばれ、その生息域はユーラシア大陸全域に広がり、アフリカ北部やインドネシアの一部にも分布しています。ツンドラ地帯を除く、広い範囲に生息していることが特徴です。

形態

ユーラシアカワウソは、頭胴長57～70センチメートル、尾長35～40センチメートル、体重4.1～16キログラムに達します。背面は黒褐色や灰褐色で、喉から胸部、腹部にかけては淡黄色や灰白色をしています。鼻鏡と呼ばれる鼻孔周辺の裸出部は、アルファベットの「W」字型をしています。水かきのある足は、水中での生活に適応しており、肉球の半分程度まで伸びています。

分類

ユーラシアカワウソは、いくつかの亜種に分類されています。 Lutra lutra lutra を基準種とし、Lutra lutra angustifrons、Lutra lutra aurobrunneusなど、多くの亜種が知られています。 かつては、[ニホンカワウソ]をユーラシアカワウソの亜種として分類されていましたが、現在は独立種として扱われています。しかし、ニホンカワウソの分類については、さらなる研究が必要とされています。

日本のカワウソには、[ニホンカワウソ]と、北海道に生息していたとされるホッカイドウカワウソ(Lutra lutra whiteleyi)の2つの亜種が知られていました。どちらも現在では絶滅したと考えられています。ニホンカワウソは、本州、四国、九州などに分布し、体長に対する尾の比率が大きいことが特徴でした。ホッカイドウカワウソは、北海道に生息していたとされ、標本数が少なく、詳細な形態や分類上の位置付けは不明な点が多く残っています。

生態

ユーラシアカワウソは、河川、湖沼、湿原、海岸など、水辺環境に生息しています。主に夜行性ですが、薄明薄暮時にも活動します。食性は動物食で、魚類が中心ですが、カエル、鳥類、小型哺乳類、甲殻類なども食べます。獲物を捕らえる際には、群れで協力することもあります。繁殖期には、陸上や水中での交尾を行い、妊娠期間は約2ヶ月で、1回に1～5頭の幼獣を産みます。生後1ヶ月ほどで開眼し、2ヶ月ほどで離乳します。

人間との関係

ユーラシアカワウソは、一部地域では人に飼いならされ、漁業に利用されてきた歴史があります。しかし、一方で漁獲物を食害する害獣として扱われることもあり、人間との関係は複雑です。

生息数の減少は、生息地の破壊、水質汚染、交通事故、漁業による混獲、毛皮目的や食用の狩猟など、様々な要因が複雑に絡み合っています。西ヨーロッパの一部では生息数の回復が見られる一方、アフリカ北部やアジアなどでは、生息数の減少が深刻な問題となっています。

日本では、毛皮目的の乱獲、森林伐採、河川改修、水質汚染、漁業による混獲、害獣駆除などにより、ニホンカワウソは絶滅しました。1964年には国の天然記念物、1965年には特別天然記念物に指定されていましたが、保護が間に合いませんでした。

日本のニホンカワウソの現状

ニホンカワウソは、かつて日本の本州、四国、九州に広く分布していましたが、1979年以降、確実な目撃例は確認されていません。絶滅危惧種に指定され、様々な保護対策が講じられてきましたが、残念ながら絶滅に至りました。現在、日本国内では、ユーラシアカワウソは生息していません。

ユーラシアカワウソの現状は、私たち人間が自然環境とどのように共存していくべきかを問いかける、重要な事例となっています。

もう一度検索