ラインハルト・フォン・ローエングラム

ラインハルト・フォン・ローエングラム： 激動の生涯

ラインハルト・フォン・ローエングラムは、田中芳樹のSF小説『銀河英雄伝説』の主要人物であり、銀河帝国の主人公です。作中では主に「ラインハルト」と呼ばれますが、ローエングラム侯、ローエングラム公といった爵位名や、旧姓であるミューゼル少佐などの呼称も用いられます。物語初期には、敵対勢力から「金髪の孺子」と蔑まれることもありました。

概要

ラインハルトは、銀河帝国の打倒と銀河の統一を志す青年将校です。並外れた軍事的な才能を持ち、幼馴染のジークフリード・キルヒアイスを側近として、下級貴族の身から数々の武勲を挙げ、20歳にして銀河帝国軍上級[[大将]]、そして伯爵の地位にまで昇りつめます。姉アンネローゼを皇帝に奪われたことへの憎悪が彼の野心の原点ですが、その異例の出世は、姉の寵愛によるものと見なされ、門閥貴族や有力軍人からの反感を買うことにもなります。

物語序盤から、帝国全権掌握のために、貴族からの妨害や策謀を乗り越え、功績を重ねていきます。リップシュタット戦役後、事実上の最高権力者となった彼は、銀河統一のため、自由惑星同盟との戦争を激化させます。同盟滅亡後、新銀河帝国の初代皇帝に即位し、ローエングラム朝を開闢。しかし、独立勢力となったヤン・ウェンリーや、佞臣による内乱に悩まされます。物語後半では、体調を崩す場面が増え、最終的に不治の病で25歳でこの世を去ります。

略歴

生い立ち

帝国暦467年（宇宙暦776年）3月14日、下級貴族の長男として誕生。幼少期に母親を亡くし、姉アンネローゼに育てられました。父の浪費により貧しい生活を強いられる中、親友となるジークフリード・キルヒアイスと出会います。10歳の時、姉が皇帝の後宮に召されたことで、ゴールデンバウム王朝と皇帝を憎悪するようになり、帝国を変革することを誓います。その決意をキルヒアイスに伝え、共に軍人への道を選び、帝国軍幼年学校に進学。卒業後、特例で少尉から軍歴を開始します。

異例の出世

初陣は地上戦でしたが、その後は軍務省勤務や駆逐艦艦長などを経て、数々の戦いで軍事的才能を発揮。20歳で上級[[大将]]に昇進し、ローエングラム伯爵家の名跡を継ぎます。この過程で、多くの有能な部下と出会いますが、その異例の出世は、門閥貴族や軍上層部から嫉妬を買い、命を狙われることもしばしばありました。アスターテ会戦での功績により帝国元帥、アムリッツァ会戦後に宇宙艦隊司令長官となり、軍の実権を握ります。リップシュタット戦役では、帝国軍最高司令官として門閥貴族勢力を打倒。さらに宰相リヒテンラーデ公を排除し、自らが宰相を兼任、公爵に進み、事実上の銀河帝国支配者となります。

キルヒアイスの死と皇帝即位

門閥貴族との戦いで、自らの過失により親友キルヒアイスを失い、深い悲しみに暮れますが、やがて立ち直り、銀河を統一することを誓います。フェザーン自治領と自由惑星同盟を制圧し、宇宙暦799年／帝国暦490年／新帝国暦1年に、ゴールデンバウム朝から皇帝位を簒奪、23歳でローエングラム王朝を開き、初代皇帝ラインハルト1世として即位します。新帝国暦2年には、ヒルダを皇后に迎えます。

崩御

その後の動乱にも陣頭指揮を執り続けましたが、原因不明の奇病「変異性劇症膠原病」（後に「皇帝病」と呼ばれる）に侵されます。新帝国暦3年（宇宙暦801年）7月26日、25歳で崩御。在位はわずか2年余りでした。

能力と性格

ラインハルトは、軍人としては「戦争の天才」「常勝の英雄」として知られています。しかし、戦略的な優位よりも、自ら陣頭に立ち勝利することにこだわることがあり、その結果、ヤン・ウェンリーに敗北を喫することもあった。また、冷徹な決断を下すこともあり、時には民衆を戦略のために犠牲にすることも厭いませんでした。

政治家としても有能であり、ゴールデンバウム王朝の悪弊を改革し、公平な税制や裁判制度を確立しました。民衆からは圧倒的な支持を得ており、ヤン・ウェンリーからも「最も理想的な専制君主」と評されています。しかし、自身の内面を顧みることは少なく、他者の心情を理解できない一面がありました。

人事と失敗

優秀な人材を登用する一方で、旧体制下の既得権益者や、能力不足の人物を登用する失敗もありました。特に、ロイエンタールを旧同盟領の統治に任じた人事は、結果的に大規模な反乱を招いてしまいます。また、自ら陣頭に立つことにこだわり過ぎるあまり、バーミリオン星域会戦ではヤン・ウェンリーの策略にはまり、危機に陥るなど、その性格が欠点となることもありました。また、テロ対策に対する意識が薄く、暗殺の危機にさらされることも多々ありました。

人柄

容姿は端麗で、金髪とアイスブルーの瞳を持つ美青年として描かれています。しかし、幼少期の経験から、質素な生活を好み、権力者の特権を嫌う一面もありました。自己主張が強く、激情家な面もありますが、特に姉アンネローゼを中傷されると激昂します。他人の下にいることを嫌い、そのため、年長者や同僚と衝突することもありました。しかし、目下の者からの信頼は厚く、カリスマ性を発揮していました。また、無趣味でワーカホリック気味な一面があり、女性関係には疎く、経験も乏しかったようです。

モデル

作者によると、ラインハルトは古今東西の英雄たちの集合体であり、アレクサンドロス大王、カール12世、ナポレオン1世などの要素が組み込まれているとされます。アニメ版のキャラクターデザインは、映画女優ダイアン・レインがモデルとされています。

家族

幼い頃に母を亡くし、姉アンネローゼに育てられました。父とは絶縁状態にあり、親友キルヒアイスを家族のように思っていました。後に妻ヒルダとの間に息子アレクサンデルをもうけますが、ヒルダとは、夫婦としての時間があまりなかったようです。しかし、互いに深く理解しあい、不器用ながら愛情を育んでいました。

座乗艦

主な座乗艦は以下の通りです。

戦艦ブリュンヒルト：本編を通しての乗艦。
戦艦タンホイザー：外伝での座乗艦。
駆逐艦エルムラントII：外伝「黄金の翼」での乗艦。

演じた人物

ラインハルトを演じた人物は以下の通りです。

アニメ：堀川亮、緑川光、宮野真守
* 舞台：松坂桃李、ニコラス・エドワーズ、間宮祥太朗、永田聖一朗、凰稀かなめ

ラインハルト・フォン・ローエングラムは、その圧倒的な才能とカリスマ性で多くの人々を魅了しましたが、同時に多くの苦悩を抱えた、複雑な魅力を持つ人物でした。

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