ルーム・トゥ・リード

ルーム・トゥ・リード (Room to Read)

国際的な非政府組織（NGO）であるルーム・トゥ・リードは、2000年に元マイクロソフト幹部だったジョン・ウッド氏によって設立されました。「子どもの教育が世界を変える」という強い信念に基づき、開発途上国の子どもたちが読み書きの能力を習得し、特に女子が必要な教育を受けられるよう支援することで、彼らの人生を変えていくことを目指しています。現地コミュニティ、パートナー組織、そして政府機関と緊密に連携しながら、すべての初等教育期の子どもたちが読み書きと読書習慣を身につけること、そして女子生徒が確実に中等教育を修了できるよう、多様なプログラムを展開しています。設立以来、アジアやアフリカを中心に16か国で活動を展開し、2019年末までに1800万人を超える子どもたちに教育の機会を提供してきました。

設立の背景

ルーム・トゥ・リード誕生のきっかけは、創設者ジョン・ウッド氏の個人的な体験にあります。休暇でネパールを訪れた際、偶然立ち寄った村の小学校で、彼は驚くべき光景を目の当たりにしました。図書館にはほんの数冊の本しかなく、しかもその貴重な本は、子どもたちが傷つけないようにと鍵のかかった本棚に厳重に保管されており、自由に手に取ることすらできなかったのです。本を求めているにもかかわらず、本に触れることさえ許されない子どもたちの現実を目の前にし、ジョン・ウッド氏は教育支援こそが自身の果たすべき使命であると確信しました。マイクロソフト社を退職後、彼はルーム・トゥ・リードを設立。多くの支援者の協力を得て、2000年にはネパールの農村地帯に初の学校と図書館を建設しました。その後、ベトナム、カンボジア、インドなど活動国を拡大し、現在は16か国で教育支援に取り組んでいます。

活動の哲学と重要性

教育の普及は、開発途上国が抱える様々な課題を解決する上で最も効果的な手段の一つであると、国連をはじめとする多くの機関が指摘しています。ユネスコによれば、世界には現在も7億7千万人の人々が読み書きができない状態にあり、その約3分の2は女性です。また、学校に通えない子どもたちの数も1億人に上るとされています。教育の機会がないことは、貧困の連鎖を生み出すだけでなく、母子の健康を損ない、乳幼児死亡率を高める要因となり、さらには子どもや女性に対する人権侵害にも繋がります。ルーム・トゥ・リードは、このような深刻な問題に対し、初等教育を中心とした教育の普及こそが、経済発展、伝染病からの保護、児童労働や少女売春といった人権侵害の根絶、そして女性の社会的地位向上にとって不可欠であると考えています。

主な活動内容と実績

ルーム・トゥ・リードは、開発途上国において、現地コミュニティやパートナー組織と緊密に協力しながら、子どもたちが質の高い教育を受けられる環境を整備しています。その活動は主に「識字教育プログラム」と「女子教育プログラム」の二つの柱で構成されています。

識字教育プログラム

子どもたちが初等教育の間に読み書き能力を身につけ、読書習慣を育むことを目指すプログラムです。具体的には、学校や図書館の建設・整備、現地の言葉で書かれた質の高い児童書の出版・配布、そして教師への研修などを実施しています。2019年末までに、37,000校のパートナー校で1,430万人の子どもたちを支援し、毎年1万人もの先生に研修を提供しています。また、1,582タイトルの現地語児童書を出版し、累計2,600万冊の書籍を寄贈してきました。

女子教育プログラム

女子生徒が様々な障壁を乗り越えて中等教育を修了し、自立した人生を送れるよう支援するプログラムです。ライフスキル研修、メンターシップ、そして経済的な困難を抱える生徒への奨学金提供などを通じて、彼女たちが学びを続けられるようにサポートします。2019年末時点で、85,313名の女子生徒がこのプログラムに参加しており、継続的なサポートを受けている生徒の96%が進級しています。ライフスキル研修には87%の生徒が参加し、新たに28,000名の女子がプログラムに加わりました。

日本での取り組み：認定NPO法人ルーム・トゥ・リード・ジャパン

日本では、認定NPO法人ルーム・トゥ・リード・ジャパンとして活動を展開しています。これは、創設者ジョン・ウッド氏の著書「マイクロソフトでは出会えなかった天職」に感銘を受けた人々によって2007年に設立が準備され、2010年に事務所開設とNPO法人認可を経て、2017年に認定NPO法人としての認定を受けました。認定NPO法人は、その運営の健全性や公益性において高い基準を満たした団体であり、わずか2%以下のNPO法人が得られる資格です。この認定により、ルーム・トゥ・リード・ジャパンへの寄付は税制優遇の対象となります。

日本事務所には職員は1名ですが、プロボノ企業や1000名を超える個人サポーターといった日本最大級のボランティア組織に支えられ、精力的にファンドレイズ（資金調達）活動と広報・啓発活動を行っています。集められた資金は、イベント経費などを最小限に抑え、そのほぼ100％がアジアやアフリカの活動国における教育プログラムのために活用されています。

多様な方法でルーム・トゥ・リードの活動を支援することが可能です。例えば、書籍を寄付できる「チャリボン」、Tポイントやベネフィットステーションのポイントを利用した寄付、さらには「BEERS FOR BOOKS」のようなユニークなキャンペーンや、毎月少額から参加できる「ライブラリークラブ」などがあります。これらの支援を通じて、教育を必要とする子どもたちに本や学びの機会を提供することができます。ジョン・ウッド氏のその後の活動を記した著書「僕の「天職」は7000人のキャラバンになった」も出版されており、活動の広がりを知ることができます。

ソーシャルメディアでの情報発信

ルーム・トゥ・リードは、ソーシャルメディアを積極的に活用しています。特にTwitter社とは、初のコーポレート・ソーシャル・イノベーション・パートナーとして連携し、国際識字デーなどの機会に教育の重要性を訴えるキャンペーンを展開しています。日本でもTwitterのおすすめユーザーとして紹介されるなど、幅広い層への認知向上と啓発に努めています。

ルーム・トゥ・リードは、教育という最も基本的な権利をすべての子どもに保障することを通じて、貧困のない、より平和な世界の実現を目指し、活動を続けています。

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