レディメイド

レディメイド：既製品から生まれた芸術とファッション

「レディメイド」とは、一般的に既製品を指す言葉です。オーダーメイドと対照的な概念で、大量生産された商品をあらわします。この言葉は、服飾と美術の両方の分野で用いられ、それぞれ異なる意味合いを持っています。

ファッションにおけるレディメイド

服飾業界では、レディメイドは「既製服」を意味します。企業が大量生産し、サイズ別に用意された衣服が、店頭に並べられ販売される形態です。フランス語では「プレタポルテ（prêt-à-porter）」と呼ばれ、日本では高級既製服を指すことが多い一方、注文服は「オートクチュール」と呼ばれます。既製服は、効率的な生産と幅広い顧客への対応を可能にし、現代のファッション産業を支える重要な要素となっています。

美術におけるレディメイド：デュシャンの革命

美術の文脈において、レディメイドは、1915年、マルセル・デュシャンによって提唱された革新的な概念です。デュシャンは、既存の日常品を、何らかの手を加えることなく、そのまま芸術作品として発表しました。彼の作品は、既存の芸術観念を根底から揺るがすものでした。それまで、芸術作品は、芸術家の創意と熟練した技術による手作業によって生み出されるものと広く信じられていました。しかし、デュシャンは、既製品を「選ぶ」という行為自体を創作行為と位置づけたのです。

デュシャンのレディメイドは、単なる既製品の展示ではありません。彼は、それらの対象に新たな意味や文脈を与え、鑑賞者の思考を促すことを意図していました。彼の作品は、芸術作品が必ずしも美しさや技術の高さだけによって定義されるものではないことを示唆しています。鑑賞者の解釈や思考こそが、作品の本質的な要素であるという主張です。彼は、「よい趣味は悪い趣味と同等に有害である」と述べ、美術的な価値観にとらわれない、概念的な芸術へのアプローチを提示しました。

レディメイドの芸術への影響

デュシャンのレディメイドは、美術界に大きな衝撃を与え、その後の芸術表現に多大な影響を与えました。既存の枠にとらわれない自由な表現、既存のものを再解釈する姿勢など、現代アートの基礎を築いたと言っても過言ではありません。ポップアートやジャンクアート、アサンブラージュ（assemblage）といった芸術運動は、レディメイドの思想を受け継ぎ、発展させています。これらのムーブメントは、映画や漫画、廃材など、大衆文化や日常の素材を用いた作品を特徴とし、従来の芸術概念を拡張しました。

まとめ

レディメイドは、服飾と美術の両方で用いられる言葉ですが、その意味合いは異なります。服飾においては大量生産された既製服を指す一方、美術においては、デュシャンによって提示された、既存の日常品を芸術作品として再定義する概念を意味します。デュシャンのレディメイドは、芸術の本質や芸術家の役割、そして芸術作品の定義を問う、革命的な試みであり、現代アートの発展に大きな足跡を残しました。その影響は、現在でも様々な芸術表現に見ることができます。

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