ロイヤルコペンハーゲン

デンマークを代表する陶磁器ブランド、ロイヤル コペンハーゲンは、1775年に王室の援助のもと設立された、豊かな歴史と伝統を持つ工房です。正式名称は「ロイヤル・コペンハーゲン陶磁器工房」といい、その名の通り、王室御用達の窯として出発しました。

特徴と魅力

ロイヤル コペンハーゲンの製品の最大の魅力は、熟練した職人による手描きの絵付けです。創業当初から東洋の磁器、特に中国の青と白の染付から強い影響を受けており、鮮やかなコバルトブルーで描かれる精緻な絵柄がブランドの象徴となっています。全ての製品の裏側には、ブランドのマークである王冠と3本の波線、そして絵付けを担当したアーティストのサイン、製造番号が記されており、一つとして同じものはない手仕事の証となっています。

特に有名なパターンの一つに、1868年から続く「ブルーフルーテッド」があります。これは下絵付けで施される手描きの唐草模様のパターンで、発表以来、時代を超えて世界中で愛され続けるベストセラーです。唐草模様と組み合わせられる繊細なレース技術もロイヤル コペンハーゲンの特徴であり、その優雅で格調高いデザインは、特に日本の食卓でも高い人気を誇っています。

また、1908年から毎年欠かさず制作されているイヤープレート（クリスマスプレート）も、コレクションアイテムとして世界中に多くの愛好家がいます。

歴史

ロイヤル コペンハーゲンの歴史は、1773年にデンマークのボーンホルム島で高品質なカオリンが発見されたことに始まります。化学者フランツ・ヘンリック・ミュラーは、これを用いてデンマーク初の硬質磁器を完成させました。1775年、国王クリスチャン7世とユリアナ・マリア王太后の支援を得て、「ロイヤル・コペンハーゲン」は王室御用達の窯として設立されました。さらに1779年には、王太后が磁器製造の中心地であったマイセンから技術者を招き入れ、民間の窯だった工房は王室が株式を買い上げ、王立デンマーク磁器製陶所となりました。その後、1868年には王室が「ロイヤル」の称号を使用することを条件に、株式を大商人のブラックに売却し、再び民間企業として歩み始めました。2012年には、フィンランドの消費財企業フィスカースの傘下に入っています。

ブランドマーク

ロイヤル コペンハーゲンのマークは、王冠と3本の鮮やかなブルーの波型ラインで構成されています。この3本の波線は、デンマークを囲む3つの主要な海峡（エーレスンド海峡、大ベルト海峡、小ベルト海峡）を象徴しており、その上には王室御用達であったことを示す王冠が輝いています。

バックスタンプのデザインは歴史とともに変化しており、古い時代のものはマイセンのマークに似たデザインも見られますが、1935年以降は現在使用されているマークが基本となっています。バックスタンプに記された「ROYAL COPENHAGEN DENMARK」という文字の周辺に打たれた点の位置によって、製造年を判別することが可能です。

不朽の名作「フローラ・ダニカ」

ロイヤル コペンハーゲンの歴史の中でも特に重要な位置を占めるのが、不朽の名作として名高いディナーセット「フローラ・ダニカ」です。これは創立初期にあたる1790年から製作が始まりました。当時のデンマーク王子フレデリックが、親交の深かったロシア女帝エカチェリーナ2世へ献上するために企画されたもので、デンマークの植物図鑑「フローラ・ダニカ」に掲載されている2600点もの植物を食器に忠実に描き写すという、極めて壮大なプロジェクトでした。絵付師のヨハン・クリストフ・バイエルは、この途方もない作業をただ一人で12年もの歳月をかけて続けましたが、完成を待たずにエカチェリーナ2世が逝去したため、企画は中断されました。バイエルが描き上げた1802点にも及ぶオリジナルの食器は、現在もデンマークのローゼンボーグ城に大切に保存されています。この「フローラ・ダニカ」のパターンは、現在でもデンマーク王室の公式晩餐会で使用されており、その芸術性と歴史的価値を示しています。

主な代表作

フローラ・ダニカ
ブルーフルーテッド（プレイン、ハーフレース、フルレースなど複数のバリエーションがあります）
ブルーフラワー
ホワイト・ハーフレース
イヤープレート
ブルー・フィッシュ（磁器製のシーラカンス像。1972年に日本の昭和天皇・香淳皇后に献上されたことでも知られています）

ロイヤル コペンハーゲンは、その卓越した職人技と美しいデザインで、現在も世界中の人々を魅了し続けています。

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