ロンドンバス

ロンドンの赤いバス：歴史、システム、そして人々

ロンドンを象徴する赤い2階建てバス。その運行は、ロンドン交通局（TfL）傘下のロンドンバス会社によって管理され、複数の民間運行会社が路線ごとに運行権を獲得する競争入札制をとっています。そのため、運行会社は数年の周期で交代することもありますが、バスの赤い車体は変わりません。

運行システムと規模

TfLは、iBusと呼ばれる厳格な運行監視システムと調査員による実態調査で、運行ダイヤの正確性やキセル乗車への対策などを徹底的に管理しています。サービスに著しい欠陥があれば、運行権の更新は取り消されます。600を超える路線と膨大なバス停数を誇り、世界最大の規模を有するバス輸送システムです。8000台を超える赤いバスがロンドン市内を走り回り、その光景はまさにロンドンの代名詞となっています。

路線によってバスの車種は異なりますが、中心部を通る路線は主に2階建てバス、道路状況や乗客数に応じて1階建てバスも運行されています。かつては連接バス（ベンディバス）も導入されましたが、事故や渋滞問題から2011年に運行を終了しました。ロンドンバス会社は路線の運営管理、緊急時の対応、プロモーション、ダイヤ作成、路線図作成、バスステーションの管理などを担い、バスの運行そのものは行いません。バスレーンの設置もロンドンバス会社がTfLと警察に申請し、行政が決定する仕組みです。なお、長距離バスの拠点であるロンドン・ヴィクトリア・コーチステーションはTfLの直轄組織です。

歴史

ロンドンのバスの歴史は、地下鉄よりも古いとされています。1829年に馬車による旅客輸送が始まり、1855年にはロンドン・ジェネラル・オムニバス社（LGOC）が設立されました。1902年にはモーターバスが導入され、1914年には馬車バスは姿を消します。LGOCは、1922年にTfLの前身となる国営機関に統合されました。1980年代にはサッチャー政権下で民営化が進み、2000年にはロンドン市に交通運営の権利が移譲されました。

車両の歴史

2階建てバスは、1800年代中盤、馬車では輸送力が不足していたことから、馬車の天井に座席を増設したことが始まりとされています。初期の自動車バスはLGOCが製造しており、後にAEC社として独立、ロンドンバスの設計や部品供給の中核となりました。1920年代の運賃競争の後、市内バスの塗装はLGOCの赤色に統一されました。

AEC社の代表作であるルートマスターは1956年から1968年に生産され、ロンドンのバスの基本モデルとなりましたが、ワンマン化や排ガス規制強化などを背景に、1970年代後半から新型バスが導入されました。ルートマスターは2005年に定期運行から退き、ヘリテージルートとして運行されましたが、2019年に廃止されました。

連接バスは2002年に導入されましたが、事故多発や渋滞悪化などを招き、2011年に運行終了しました。その後、2012年には新型ルートマスターが導入され、現在も中心部で活躍しています。

運用

ロンドン市内バスは、10の運行会社によって運行されており、TfLが管理する路線バスは赤色を基調とした塗装です。路線番号は、開設順序に基づいていますが、路線の分割や改編で番号が変更されたものもあります。路線は比較的長く、地下鉄より安価なバス運賃と、地下鉄トラブル時の代替手段として利用されています。多くの路線が地下鉄線と並行して運行されています。

2023年には、スーパーループと呼ばれる新たな高速バス路線が10路線導入されました。周回路線と中心部への路線があり、料金は全区間一律です。

ナイトバスは、地下鉄終電後の帰宅手段として重要な役割を果たしており、多くの路線は昼間の路線と異なり、起点やルートが異なります。

運賃

ロンドン市内の赤色バスの運賃は現金払い不可で、オイスターカードまたはクレジットカードによる非接触決済が必須です。運賃は一律ですが、1日、1週間の利用額が上限に達すると、それ以降は無料となります。バス専用の一日、一週間、一ヶ月券もあります。また、地下鉄定期券にはバス利用も含まれます。

使用車両

路線や運行会社によって使用車両は異なります。近年はハイブリッド車などの導入も進んでいます。日本のバスは導入されていません。冷房設備の設置率は低く、設置されていても効率が悪い場合もあります。

運行会社

ロンドンのバス運行は、複数の民間企業が担っています。これらの企業の中には、鉄道事業も手がける大企業も多く、イギリスではバス事業が発展して鉄道事業に進出したケースが多いことがわかります。

iBusシステム

iBusは、バスの運行管理システムで、バスの位置情報、ダイヤの正確性などをリアルタイムで監視しています。また、全バスに搭載された自動アナウンスシステムやCCTV（監視カメラ）と連携しており、運行の効率化と安全確保に役立っています。スマートフォンアプリでも利用可能です。

ロンドン同時爆破事件

2005年のロンドン同時爆破事件では、バスも標的となり、多くの犠牲者が出ました。この事件を機に、バスの防犯対策は強化されました。

主要バス停とバスステーション

主要なバス停は、オックスフォードサーカス、トラファルガー・スクエア、ピカデリー・サーカスなどです。ナイトバスは、トラファルガー・スクエアを拠点に運行している路線が多いです。

ロンドンの赤いバスは、その歴史と進化、そして人々の生活に深く関わってきた交通手段です。今後も、技術革新や社会情勢の変化に対応しながら、ロンドン市民の足として、その役割を担い続けるでしょう。

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