ピカデリー

ピカデリー：ロンドンの歴史と文化が交差する街路

ロンドン中心部のウェストミンスターにあるピカデリーは、ハイド・パーク・コーナーからピカデリーサーカスまで続く全長約1.6kmの街路です。ロンドン南西部のメイフェア地区へ通じ、A4道路の一部としてハマースミス、アールズ・コート、ヒースロー空港へと続く重要な交通路でもあります。その歴史は中世にまで遡り、「レディングへの道」や「コーンブルックへの道」として知られていました。

歴史：中世から現代まで

初期の歴史：ピカディリーの誕生

17世紀初頭、仕立屋のロバート・ベイカーが土地を取得し、当時流行していたピカディルという襟飾りの製造販売で成功を収めます。彼はこの土地に自宅であるピカディリー・ホールなどを建設し、これが地名の由来となりました。当初は「ポルトガル・ストリート」と呼ばれていましたが、グリーン・パーク建設に伴い交通の要衝として発展を遂げます。この頃、クラレンドン・ハウスやバーリントン・ハウスなど、ロンドンでも屈指の豪邸が建設され、ピカデリーの威容はますます高まりました。バーリントン・ハウスには現在、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツなど著名な協会の本部が置かれています。

17世紀後半以降：繁栄と変化

チャールズ2世の治世下では、ピカデリーは高級住宅街として発展し、多くの貴族や富裕層が邸宅を構えました。1684年にはセント・ジェームズ教会が聖別され、周辺地域はセント・ジェームズ教区となりました。18世紀には、オールド・ホワイト・ホース・セラーなど、人気のコーチング・インや書店が軒を連ね、活気に満ちた街路となりました。また、ロスチャイルド家もこの地に大邸宅を構え、ピカデリーの歴史に名を刻んでいます。1790年頃に建てられたバス・ホテル、1887年のウォルシンガム・ハウス跡地には、1906年に高級ホテル、リッツ・ロンドンが建設されました。ピカデリー・サーカス駅は1925年から1928年にかけて建設され、地上構造を持たない初の地下鉄駅として知られています。

20世紀：光と影

20世紀に入ると、ピカデリーはヘロインの取引が盛んに行われる場所となり、1960年代にはロンドンの脱法ドラッグ取引の中心地として悪名を轟かせました。しかし、その後は状況が改善され、現在では高級ブティックや有名デパートが立ち並ぶ、ロンドンの主要ショッピング街として賑わっています。リッツ・ロンドンのほか、パーク・レーン・ホテル、アシーニアム・ホテル、インターコンチネンタルなど、数々の高級ホテルや、フォートナム＆メイソンなどの有名店が軒を連ねています。

文化的影響

ピカデリーは、オスカー・ワイルドの『真面目が肝心』やP・G・ウッドハウスの作品など、多くのフィクション作品にも登場し、その華やかな雰囲気や歴史的背景は、人々の想像力を掻き立て続けています。また、イギリス版モノポリーにも登場するなど、ロンドンの象徴的な場所として広く認知されています。

交通の要衝

ピカデリーは、リージェント・ストリート、シャフツベリー・アベニューなど主要な道路と接続しており、ロンドンの交通の要衝となっています。19世紀半ばからは交通渋滞が問題となり、道路拡張工事が行われました。現在もロンドンバスや地下鉄ピカデリー線が通り、多くの観光客や地元の人々で賑わっています。

まとめ

ピカデリーは、歴史、文化、商業が複雑に絡み合った、ロンドンの魅力を凝縮した街路です。中世からの歴史、華麗な建築物、そして現代の繁栄まで、その変遷はロンドンの発展そのものを物語っています。今後もロンドンのランドマークとして、人々の生活や文化に彩りを添え続けることでしょう。

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