ワッキング

ワッキング：ディスコから生まれた表現力豊かなダンス

ワッキングは、1970年代、アメリカ合衆国ロサンゼルスのLGBTQ+コミュニティが中心となったクラブシーンで生まれたストリートダンスです。ディスコ全盛期の熱狂的なエネルギーと、洗練された表現力が融合した、魅力的なダンススタイルとして知られています。

歴史：パンキングからワッキングへ

ワッキングの歴史は、1970年代初頭に生まれたダンススタイル、「パンキング」に遡ります。しかし、当時「punk」という言葉はゲイ男性に対する蔑称でもあったため、より肯定的なニュアンスを持つ名称への変更が望まれました。そこで、パンキング特有の、腕をリズミカルに動かす動きを指す「whack」という言葉に着目し、「ワッキン（Waackin’）」と呼ばれるようになりました。その後、ダンサーのジェフリー・ダニエルが「g」を追加し、現在の名称「ワッキング（Waacking）」が定着しました。

初期のワッキングは、地下クラブで輸入ディスコレコードに合わせて踊られることが多く、音楽はダンスフロアの雰囲気を高めるため、ピッチを上げたものが好んで使われました。当初は限られたコミュニティで親しまれていましたが、アメリカのダンス音楽番組『ソウル・トレイン』への出演などを機に認知度が向上し、ロサンゼルスを拠点とする「Outrageous Waacking Dancers」のようなダンスグループも結成されました。2011年には、アメリカのテレビシリーズ『アメリカン・ダンスアイドル』でクマリ・スラジがワッキングを取り入れた振付を披露し、さらに注目を集めました。現在では、サウスカロライナ大学演劇・ダンス学科など、いくつかのダンスプログラムにも取り入れられるようになり、その存在感はますます大きくなっています。

特徴：腕の動きと表現力の融合

ワッキングは、大きく回転する腕の動きが最大の特徴です。腕を頭上で円を描くように動かし、その動きに合わせたポーズや表情を組み合わせることで、ダイナミックかつ繊細な表現を可能にしています。音楽のリズムに合わせて、流れるような動きと鋭い動きを織り交ぜながら、ダンサー自身の個性を表現するスタイルです。その表現力は、単なるダンスの枠を超え、一種のパフォーマンスアートと言えるでしょう。

多様な影響：ハリウッドから現代ポップカルチャーまで

ワッキングは、ジャズダンス、体操、格闘技など、様々なダンスや動きの要素を取り入れています。特に、同時期にロサンゼルスのクラブシーンで発展したロッキングと視覚的に類似した点も見られますが、成立したコミュニティや使用する音楽（ワッキングはディスコ、ロッキングはファンク）に違いが見られます。ワッキングは、主にLGBTQ+クラブで発展した点が特徴です。

さらに、ハリウッド映画スターの影響も無視できません。ダンサーたちは、ローレン・バコール、マレーネ・ディートリヒ、ベティ・デイヴィス、ジェームズ・ディーンといったスターたちのスタイルからインスピレーションを得て、動きやポーズだけでなく、衣装やメイク、表情など、ダンス全体の表現に反映させています。

近年では、アニメ番組『スティーブン・ユニバース』で、キャラクターのガーネットが魔法の力を発動する際の動きとしてワッキングが取り上げられ、より幅広い層に認知されるようになりました。

まとめ：進化し続けるダンススタイル

ワッキングは、その誕生から現在まで、時代や文化、様々な要素を吸収しながら進化を続けているダンススタイルです。独特の腕の動きと表現力、そしてLGBTQ+コミュニティとの深い関わりは、ワッキングを他に類を見ない魅力的なダンスとして際立たせています。これからも、ワッキングが世界中で愛され、発展していくことを期待しています。

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