ワニガメ

ワニガメ（鰐亀）の詳細解説

ワニガメ（学名：Macrochelys temminckii）は、カメ目カミツキガメ科に分類される大型のカメです。ワニガメ属としては、現生種では本種のみが知られています。

分布

ワニガメは、アメリカ合衆国南東部に固有の種です。具体的には、アイオワ州南東部、アラバマ州南部、イリノイ州南西部、オクラホマ州東部、カンザス州、ケンタッキー州西部、ジョージア州南部、テキサス州東部、テネシー州西部、フロリダ州北西部、ミシシッピ州、ミズーリ州東部および南西部、ルイジアナ州に分布しています。

形態

ワニガメは非常に大型のカメで、最大甲長は80cmに達し、体重は100kgを超えることもあります。記録によっては143kgや183kgに達した個体も報告されています。一般的にオスの方がメスよりも大型になります。

背甲は凹凸が激しく、各甲板には発達したキール（筋状の隆起）があります。また、現生のカメの中では唯一、肋甲板と縁甲板の間に上縁甲板を持つことが特徴です。背甲の色は黄褐色、暗褐色、暗灰色など様々です。

頭部は非常に大きく、眼窩も大きいことが特徴です。吻端は突出し、顎の先端は鉤状に尖っています。舌には独特な肉質の器官があり、血流によって赤やピンク色に変化します。この器官の色は個体差があり、成体でもピンク色の個体や、幼体でも暗色の個体が見られます。側頭部や頸部には棘状の突起があります。頭部や頸部の背面は灰色、黒、黄褐色などで、腹面は灰色や黄褐色です。

尾は背面が3列の棘状鱗、腹面が不規則な小型鱗で覆われています。カミツキガメと同様に、非常に強力な咬合力を持ち、人間の指を食いちぎるほどの力があります。ただし、一般的にワニガメはカミツキガメよりも攻撃性は低いとされ、人間から積極的に手を出さない限り、噛み付くことは少ないとされています。

卵は直径3 - 5.1cmの球形で、殻は白く硬いです。幼体の舌にある肉質の器官は先端が枝分かれしており、ピンク色をしています。成長とともにこの器官の分枝は消失し、色も黒ずんでいきます。

分類

ワニガメ属はかつて北アメリカ大陸に広く分布していましたが、寒冷化により北部や西部に分布していた化石種は絶滅しました。

近年、形態とミトコンドリアDNAの分子系統解析に基づき、アラバマ州、ジョージア州、フロリダ州の特定の河川に生息する個体群を別種（M. apalachicolae、M. swanniensis）として分割する説が提唱されました。しかし、これらの説には異論もあり、M. apalachicolaeを本種のシノニムとする見解も存在します。

種小名のtemminckiiは、動物学者Coenraad Jacob Temminckへの献名です。

生態

ワニガメは、主に水深のある河川、三日月湖、水路などに生息します。底質が泥で、水生植物が繁茂した環境を好みます。ほぼ完全な水生生活を送り、産卵期のメスを除いて陸に上がることはほとんどありません。

食性は動物食傾向が強く、魚類（Centrarchus属、Dorosoma属、Lepomis属、オオクチバス属、Pomoxis属など）、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、甲殻類、貝類、動物の死骸など、口に入るものであれば様々なものを食べます。植物質も摂取し、カシ類やシイ類の果実、カキ、ペカン、ヤシなどを食べることがあります。水底で待ち伏せたり、夜間に徘徊して採食を行います。昼間は舌の肉質器官をルアーとして使い、魚類をおびき寄せて捕食することもあります。

繁殖形態は卵生です。ジョージア州やフロリダ州の個体群は、4 - 7月に産卵を行います。メスは昼間に水場から離れた陸上に穴を掘り、その中に産卵巣を作ります。一度に8 - 52個の卵を産み、野生下では100 - 140日程度で孵化します。

人間との関係

ワニガメは、日本では在来の生態系に影響を与える可能性があるため、2005年に要注意外来生物に指定されました。その後、2015年には生態系被害防止外来種リストにおいて、定着を予防する外来種（その他の定着予防外来種）に指定されています。

生息地の破壊、水質汚染、食用やペット目的の乱獲などにより、生息数は減少しています。2006年には、アメリカ合衆国の個体群がワシントン条約附属書IIIに掲載されました。

ワニガメはペットとしても飼育されることがあり、日本にも輸入されていました。しかし、2000年に改正動物愛護法により、カミツキガメ科単位で特定動物に指定され、飼育には地方自治体の許可が必要となりました。これにより、以前は多かった流通量も激減しました。

ワニガメの飼育には、適切な法的知識と責任が求められます。

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