ワールドコイン

ワールドコインとは

ワールドコインは、サンフランシスコとベルリンに拠点を置くTools for Humanityによって開発された、虹彩生体認証を用いた仮想通貨プロジェクトです。OpenAIの最高責任者であるサム・アルトマンらが2019年に立ち上げ、アンドリーセン・ホロウィッツなどのベンチャーキャピタルから支援を受けています。

このプロジェクトの主な目的は、オンライン上で増加するBOTと人間を区別するための信頼性の高い認証システムを構築することです。そのために、虹彩生体認証装置「オーブ」を開発し、これを用いてユーザーが人間であることを証明する「ワールドID」を発行しています。ワールドIDは、公式アプリであるワールドアプリを通じて無料で取得でき、認証されたユーザーにはトークンであるワールドコイン（WLD）が付与されます。

ワールドアプリは、取得したワールドIDを様々なプラットフォーム（Reddit、Discord、Minecraftなど）のアカウントと連携させ、人間であることの証明を可能にします。また、WLDを用いた決済や送金、デジタル資産の購入も行える金融インフラとしての機能も備えており、将来的にはユニバーサルベーシックインカム（UBI）への応用も構想されています。

2024年9月時点で、ワールドIDの登録者数は650万人を超えています。

歴史

ワールドコインの起源は、2019年にサム・アルトマンがアレックス・ブラニアに送ったメールに遡ります。アルトマンは、AGI（汎用人工知能）の実現と、それによる社会の変革を確信しており、UBIの必要性を感じていました。また、暗号資産に対して懐疑的な面を持ちながらも、そのネットワーク効果の大きさを認識し、スケーリングの必要性を感じていました。こうして、アルトマン、マックス・ノベントスターン、ブラニアによってTools for Humanityが設立され、ワールドコインプロジェクトが開始されました。

2021年、Tools for Humanityは、WLDをより公正な世界経済を推進するためのトークンと位置づけました。WLDはイーサリアムのレイヤー2に基づいており、独自の経済圏を持ちつつ、イーサリアムのセキュリティも活用しています。同年、共同設立者の一人であるノベントスターンは、ワールドコインを退任し、別のベンチャー企業を立ち上げました。

2023年7月24日、ワールドコインは正式にサービスを開始しました。ベータ期間には200万人のユーザーが参加し、サービス開始と同時にオーブを世界20カ国、35都市以上に1500個展開することを発表しました。また、同日、大手仮想通貨取引所であるバイナンスなどにWLDが上場しました。

2024年2月には、アルトマンがCEOを務めるOpenAIが動画生成AIツールSoraを発表したことを受けて、WLDの価格が急騰。過去7日間で190%近く上昇し、デイリーユーザーが100万人を突破、時価総額は10億ドルに迫りました。アルトマンは過去に、AGIの利益を基盤としたUBIをワールドコインで提供する可能性を示唆しています。

同年9月、Tools for HumanityのCEOであるブラニアは、韓国で行われた記者会見で、フェイスブックのような巨大なユーザー基盤を目指すビジョンを語りました。

設計

ワールドコインは、BOTやAIによる不正利用を防ぐために、ワールドIDという信頼性の高い認証システムを提供しようとしています。ユーザーは、虹彩スキャナーで虹彩をスキャンしてもらうことで、WLDと引き換えにワールドIDを取得できます。このトークン配布システムは、ユニバーサルベーシックインカムの議論に触発されたとされています。

批判と問題点

ワールドコインは、投機や詐欺の懸念から、米国では規制当局の取り締まりを受けており、利用することができません。また、WLDの価値が不明確であることから、単なるミームコインではないかという指摘もあります。さらに、ワールドコインのUBI構想は、実際には生体認証を通じて個人情報を収集し、デジタルアイデンティティ（DID）問題を解決するための手段であり、DIDアプローチが真の目的ではないかという批判もあります。

外部リンク

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