三次喫煙

三次喫煙（さんじきつえん）とは、喫煙後、タバコの煙に含まれる有害物質が室内表面などに付着して残留し、そこから再放出されたり、塵とともに吸入されたり、皮膚が触れたりすることで体内に取り込まれる現象です。残留受動喫煙やサードハンドスモーク（third-hand smoke）とも呼ばれます。喫煙者自身が吸い込む一次喫煙、周囲の人が煙を吸い込む二次喫煙に続き、環境に残る有害物質によるリスクとして、米国ダナ・ファーバー癌研究所の提唱により認識されるようになりました。

三次喫煙の危険性は、残留したニコチンが空気中の亜硝酸と反応し、強力な発がん性物質であるタバコ特異的ニトロソアミン（TSNA）を生成することなどにあります。研究により、喫煙に使われた空間の表面には有害物質が蓄積しやすく、換気だけでは完全には除去されにくいことが示されています。三次喫煙に関連しては、放射性物質ポロニウム210を含む11種類の発がん性物質が見つかっているとの報告もあります。これらの有害物質は、特に乳幼児にリスクをもたらすと考えられています。乳幼児は床に近い位置で活動し、様々なものに触れた手を口に運ぶことが多いため、残留有害物質に接触したり、摂取したりする機会が多くなります。また、体が小さいため、同じ量の曝露でも大人より影響を受けやすい傾向があります。ただし、実際の健康被害の程度については、まだ詳細な研究が必要です。

三次喫煙は、二次喫煙（受動喫煙）に比べ一般の認知度は低いのが現状ですが、その潜在的な危険性は徐々に認識され始めています。米国での調査では、「昨日喫煙された部屋の空気が子供の健康を害するか」という問いに多くの人が肯定的であり、言葉を知らなくても危険性を感覚的に捉えている人々がいることが示唆されました。

近年、三次喫煙を問題視し、具体的な対策を講じる動きが見られます。米国では、アパートの清掃費用や、妊娠中の同僚への配慮を巡る裁判において、三次喫煙のリスクが争点となる事例が現れました。公共の場での規制も導入されています。例えば、ルイジアナ州アレクサンドリアの病院では、乳幼児の脳への影響を懸念し、2012年から三次喫煙を禁止し、煙のにおいがする職員の勤務を制限しました。日本国内では、奈良県生駒市役所が2017年から、喫煙後のエレベーター利用を45分間禁止する規則を設けています。

このように、三次喫煙は喫煙が環境に残す新たな健康リスクとして認識されつつあります。関連語句としてスメルハラスメントも挙げられます。

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