不可侵条約

不可侵条約

不可侵条約（ふかしんじょうやく）とは、国際法に基づき、条約を締結した国家同士が、互いに対する武力による侵略行為を行わないことを公式に誓約し、その内容を条約文書として定めた国際的な取り決めです。この条約は、不侵略条約（ふしんりゃくじょうやく）とも称されることがあります。その主な目的は、締結国間の軍事的な対立を回避し、少なくとも条約が有効である期間における安全保障を一時的に確保することにあります。

この条約が有効である間、締結国は常に相手国に対する一切の侵略とみなされる行動を禁じられます。これは、国境を越えた武力行使だけでなく、内政干渉や領土保全を損なう行為なども含まれる可能性があります。さらに、不可侵条約には、一方の締結国が第三国との間で戦争状態に陥った場合に関する重要な規定が含まれています。すなわち、もう一方の締結国は、その交戦相手国に対するいかなる形態の援助や支援も行ってはなりません。これは、そのような支援行為が、条約締結国に対する間接的な侵略行為とみなされるためです。したがって、不可侵条約は、単に相互不干渉を約束するだけでなく、一方の国の戦争遂行能力を高める支援を他方が行わないという義務も課します。

不可侵条約の効力に関しては、多くの条約において、締結国の一方または双方が条約の破棄を正式に宣告した後、その宣告から満一年をもって効力を失うという規定が含まれています。この「一年後の失効」という期間は、関係国に新たな国際関係や安全保障体制を構築するための猶予を与えるものです。歴史的な例としては、第二次世界大戦中の国際情勢下で締結された日ソ中立条約も、このような失効に関する条項を持っていました。

不可侵条約と類似した目的を持つ国際条約として、中立条約が存在します。しかし、これら二つの条約は、その効力の及ぶ範囲において違いがあると一般的に考えられています。中立条約が特定の紛争における非当事者としての立場を明確にし、戦争当事国のいずれにも加担しないという広範な中立性の維持を主眼とする場合があるのに対し、不可侵条約は特に締結国間における武力衝突の回避と、一方の戦争相手国への支援禁止に焦点を当てています。この効力の範囲の差が、両条約を区別する重要な点の一つとされています。

歴史上、国際情勢の安定や変動の中で、いくつかの主要な不可侵条約が締結されました。これらは、国家間の関係性やパワーバランスに影響を与えました。

主な不可侵条約の例

ソ連・リトアニア不可侵条約（1926年）
ソ連・ポーランド不可侵条約（1932年）
ソ連・フィンランド不可侵条約（1932年）
ソ連・エストニア不可侵条約（1932年）
ソ連・ラトビア不可侵条約（1932年）
仏ソ不可侵条約（1932年）
ドイツ・ポーランド不可侵条約（1934年）
中ソ不可侵条約（1937年）
独ソ不可侵条約（1939年）
ソ連・ユーゴスラヴィア不可侵条約（1941年）
* 日ソ中立条約（1941年）

これらの条約は、それぞれ特定の歴史的背景のもとで締結され、国際政治において様々な影響を及ぼしました。特に第二次世界大戦前夜から戦中にかけて、多くの不可侵条約が安全保障の一環として締結されたことが分かります。

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