中村一義

中村一義：独自の音楽世界を追求するミュージシャン

1975年、東京都江戸川区に生まれた中村一義は、日本のミュージシャンとして独自の地位を築いています。幼少期は家庭環境に悩みを抱え、祖父母の家に身を寄せた経験が彼の音楽観に影響を与えました。満州生まれの祖父の影響もあり、彼自身はクォーターであることを公表しています。

当初は絵画に傾倒していましたが、高校時代から音楽に表現方法を転換。イギリスのクリエイション・ブーム期の音楽に影響を受け、友人とバンドを結成するも成功は収めませんでした。その後、日本語詞による音楽制作を開始。大学進学資金を楽器購入に充て、祖父母宅を拠点にデモテープ制作に励みました。祖母には2年以内のデビューを約束し、その覚悟をもって音楽活動に没頭したと言われています。

1997年、シングル『犬と猫』でメジャーデビュー。同年にリリースした1stアルバム『金字塔』は、独特な日本語詞と卓越したポップセンスで高い評価を受けました。渋谷陽一氏からは「10年に一人の天才」と評され、いとうせいこう氏からも絶賛されました。このアルバム制作には自身のすべてを注ぎ込んだと語っており、当初はこれをもってアーティスト活動を終わらせるつもりだったといいます。しかし、その後、大人の事情により2ndアルバム『太陽』の制作を余儀なくされました。デビュー当時から強い音楽へのこだわりを持ち、ライブ活動は一切行いませんでした。

1999年にシングル『ジュビリー』発表後、メジャーレーベルとの契約を終了。インディーズを経て、東芝EMIと契約し、シングル『1,2,3』と3rdアルバム『ERA』を発表。2000年、初の公式アナウンスによるライブを「ROCK IN JAPAN FES.2000」で披露する予定でしたが、天候不良により中止。その後、日比谷野外音楽堂でのライブで、公式初ライブを成功させました。

2001年、「ROCK IN JAPAN FES.2001」で出会ったバンドメンバーと意気投合し、100sを結成。2002年には4thアルバム『100s』をリリースし、初の全国ツアーも敢行。大阪城ホールや日本武道館での追加公演も行われるほどの人気となりました。スピッツのトリビュートアルバムにも参加するなど、活動の幅を広げました。2004年からは100sとしての活動に本格的に移行し、精力的に作品を発表しました。

2010年には創作活動の基盤となるコンセプトサイト「KIKA:GAKU」をオープン。その後、2012年にソロ活動を再開し、10年ぶりのソロアルバム『対音楽』を発表。デビュー15周年を記念したツアーも開催しました。また、町田昌弘とのトーク&弾き語りライブツアー「まちなかオンリー!」もシリーズ化されています。Hermann H.&The Pacemakersとの共演も果たし、「中村一義 with Hermann H.&The Pacemakers」名義で活動。2014年には12年ぶりとなるソロ名義のバンド編成ツアー『RockでなしRock'n roll』を開催しました。

2017年にはデビュー20周年を記念し、ライブアレンジで再録した楽曲を収めたアルバム『最高築』を発表。現在も精力的に音楽活動を続けています。

彼の楽曲は、句読点やダブルミーニングを多用した独特の歌詞と裏声による歌唱法が特徴です。祖父から日常的に聞かされていた哲学や思想が歌詞世界に色濃く反映されており、祖父の言葉をまとめた書籍『中村語録』も出版されています。

デビュー当初はほとんどの楽器を自身で演奏し、宅録アーティストの先駆けとして注目を集めました。ライブ活動はデビューから数年は一切行っていませんでしたが、近年は100sとしての活動やソロ活動を通して、精力的にライブツアーを行っています。

中村一義の音楽は、独特の歌詞世界と卓越した音楽性で、多くのファンを魅了し続けています。彼の今後の活動にも期待がかかります。

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