中継ステーション

中継ステーション

『中継ステーション』は、クリフォード・D・シマックによる1964年発表のSF小説で、ヒューゴー賞を受賞しました。この作品は、人間と異星人との交流を描いた魅力的なストーリーで、舞台はアメリカの片田舎です。

物語の中心には、イノック・ウォーレスという男性がいます。彼は見た目は30代でありながら、実際の年齢は100歳を超えています。その理由は、彼が住む家が異星人の技術によって作られており、内部では時間の流れが非常に遅いためです。イノックの家は、異星人によって設置された物質転送機を備えた中継駅として機能し、宇宙を旅する異星人たちがこの場所を訪れます。この独特の環境が、彼の長寿の秘密であるのです。

ウォーレスはこの中継駅の管理人として、訪れる異星人たちとの交流を楽しんでいます。彼のもとには、様々な異星人が訪れ、中には彼への手土産を持参する者もいます。また、地球を訪れる異星人の中には、地元の人々や特にイノックとの友情を育む者たちもいます。時には、歓談している最中に突然亡くなり、ウォーレスの手で地球に埋葬されることもあり、彼の生活は常に驚きに満ちています。

物語が進むにつれ、地球では第三次世界大戦の脅威が迫ってきます。また、銀河系の秩序を維持するための機械「魔法装置」が盗まれるという混乱が生じ、事態は更に複雑化します。そんな中、ウォーレスのもとに、その「魔法装置」を盗んだ犯人がやってきます。彼の賢明な判断や行動が、改めて彼の存在意義を示すことになります。

登場人物は多岐にわたり、イノックを支えるウィンスロウ・グラントという郵便配達人をはじめ、埋葬された異星人を発見したCIA職員・クロード・ルイス、近隣に住むフィッシャー家など、様々なキャラクターが描かれます。また、イノックを中継駅の管理人としてスカウトした異星人のユリシーズや、イノックに親しまれる霞人間も重要な役割を果たしています。

この作品は、友情や人間の本質、異なる存在同士の理解をテーマにしています。イノックが異星人たちとの出会いを通じて何を学び、どのように変わっていくのか、読者は彼の日常と冒険に引き込まれていきます。最終的には、彼の選択が地球と宇宙の未来に影響を与える展開となることでしょう。『中継ステーション』を通じて、読者はシマックが描く不思議な宇宙の一端を体験できます。

書誌情報としては、1977年に船戸牧子の訳でハヤカワ文庫SFから刊行され、今もなお多くのファンに愛され続けています。この作品は、SFの魅力を伝える名作として、ぜひ一度手に取る価値があります。

もう一度検索