京都府立農芸高等学校

京都府立農芸高等学校

京都府南丹市園部町に広大な敷地を構える京都府立農芸高等学校は、京都府内で唯一の農業に関する専門教育を行う公立高等学校です。広大な農場や充実した施設を活用し、実践的な学びを深めることを教育の柱としています。

本校は、1年生では農業学科群として基礎を共通して学んだ後、2年生から専門性の高い農産バイオ科と環境緑地科に分かれます。農産バイオ科には、作物栽培、施設野菜栽培、畜産、草花、植物バイオ、動物バイオといった多様なコースが設けられており、伝統的な農業技術から最先端のバイオテクノロジーまで、幅広い分野を探究することができます。環境緑地科では、造園と農業土木に関する専門コースが用意されており、自然環境の保全や整備、都市・農村空間の創造に必要な知識と技術を習得します。

本校の歴史は、園部高校船南分校の跡地に農業単科高校を設置する方針が決定された1981年に遡ります。1983年には、農業経営科、造園土木科、生活科の3学科体制で開校。以降、学科改編などを経て、現在の専門性の高い教育内容へと発展してきました。創立10周年、20周年、25周年といった節目には記念式典が開催され、また2002年には第53回日本農業クラブ全国大会の事務局校を務めるなど、農業教育の振興にも貢献しています。

教育においては、「質実剛健 ―あしこしの強い青年を育てる―」を校訓に掲げ、社会に貢献できる有為な人物の育成を目指しています。日本国憲法および教育基本法の精神に基づき、高等普通教育と農業専門教育を融合させ、真理を愛し、科学技術を習得した経営者・技術者の養成を目標としています。特に、自らの社会的役割を自覚させ、研究的な姿勢や応用力を養うことに重点を置き、近代農業の発展に寄与できる実践力、そして強い責任感と精神力を持った人材を育成しています。

学校生活を特色づけるものとして、男子寮である船南寮があります。1年生の男子は全員が入寮し、共同生活を通じて規律や協調性を学びます。2・3年生も希望者は選考のうえ入寮が可能です。また、キャンパス内には水田や畑、果樹園などの栽培圃場、見本樹木が植えられた造園圃場、ガラス温室やビニールハウス、牛舎、鶏舎といった充実した農場施設が整備されており、生徒たちは実際の作業を通じて生きた技術を体得することができます。

学習面だけでなく、生徒たちの豊かな人間性を育むため、多彩なクラブ活動が展開されています。体育系では硬式野球、陸上競技、パワーリフティングなどが活躍しており、特にパワーリフティング部からは全国・関西大会での優勝者を輩出しています。文化系では茶道部や合唱部があります。さらに、専門高校ならではの農業クラブ専門部が盛んで、植物バイオ、造園、草花、野菜、畜産、環境、情報処理といった分野で、日頃の研究成果を発表したり、技術を競い合ったりしています。これらの活動を通じて、生徒たちは専門知識を深めるとともに、協調性や課題解決能力を培っています。

年間を通して様々な学校行事が企画されています。6月には学科の専門分野に関連する施設や現場を訪れる臨地研修が行われ、実践的な学びを深めます。11月の農芸祭では、生徒たちが丹精込めて育てた農産物や草花などを販売し、地域の方々との交流の場となっています。2年生を対象とした修学旅行や、希望者向けの台湾にある農業高校との国際交流研修も実施されており、視野を広げる機会となっています。また、2月には男子約18km、女子約14kmを走破するロードレースが開催され、体力と精神力を鍛えます。

本校では、生徒の進路実現に向けて、多様な資格取得支援を行っています。日本農業技術検定や造園技能検定といった専門資格に加え、危険物取扱者、毒物劇物取扱責任者、建設機械操作、各種溶接、測量士補、ボイラー技士、園芸装飾技能士など、幅広い分野の資格取得を目指すことができます。多くの検定試験は校内で実施され、専門的な知識や技術を習得するための補習も充実しています。また、大学進学を目指す生徒のために、夏季や冬季に英語、数学、国語などの集中補習が実施されています。

卒業生には、女子プロボクサーとして活躍した風神ライカ氏などがいます。

京都府立農芸高等学校は、豊かな自然環境の中で、実践的な学びと人間形成を重視し、未来の農業や関連産業、そして地域社会を支える人材育成に取り組んでいます。

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