今代司酒造

今代司酒造株式会社は、日本の新潟市に暖簾を構える、江戸時代の明和4年（1767年）創業という長い歴史を持つ酒蔵です。当初は酒の卸や旅館、飲食業を手掛けていましたが、本格的に酒造業へと参入したのは明治中期になってからのことでした。蔵の建設地として選ばれたのは沼垂地区。この地は、阿賀野川がもたらす豊富な伏流水があり、また栗ノ木川を利用した原料や製品の運搬にも適していたことから、酒造りにとって理想的な環境でした。さらに、近隣の花街の料亭に日本酒を供給する中で、食のプロフェッショナルである職人たちの厳しい舌によって、酒造りの技術は磨かれていきました。

しかし、第二次世界大戦後の混乱期には、米不足や外来酒の流入といった社会情勢の変化が、多くの日本酒蔵に深刻な影響を与えました。新潟清酒の代名詞と称されることもあった今代司酒造も例外ではなく、幾度となく経営の危機に直面しました。困難な時代に造り石数を大幅に減らすことを余儀なくされましたが、この経験が酒造りに対する真摯な姿勢を一層強める契機となりました。そして、2006年からは、醸造アルコールの添加を一切行わない、全国的にも珍しい「全量純米仕込み」へと大きく舵を切ります。これにより、純米大吟醸酒、純米吟醸酒、純米酒のみを醸造するという、品質を最優先する体制を確立しました。

酒造りの根幹をなす原料には強いこだわりを見せています。2018年時点では、一部の銘柄を除き、麹米と掛米の両方に新潟県産の酒造好適米を100％使用しています。仕込み水には、清冽な菅名岳の天然水を用いており、酒質の高さに貢献しています。

近年には経営体制の刷新が行われました。2011年にはNSGグループの和僑商店が増資を引き受け、経営層が交代するとともに、酒蔵の設備やブランドイメージ、そして酒のラベルデザインに至るまで、モダンな感性を取り入れた再構築が進められました。この革新的な取り組みから生まれた代表的な銘柄が、清酒「錦鯉KOI」です。そのユニークで美しいボトルデザインは、国内外で高い評価を獲得し、グッドデザイン賞をはじめ、ニューヨーク、ロンドン、ドイツ、イタリア、香港など、世界的なデザイン賞（例：The One Show、Cannes Lions、D＆AD、iF Design Awardなど）を多数受賞しています。

酒造りだけでなく、観光客向けのサービス拡充にも力を入れています。積極的に酒蔵見学を受け入れ、また直売所を運営することで、多くの人々に酒蔵と日本酒への関心を高める機会を提供しています。これらの取り組みは高い評価に繋がり、2017年度には年間3万人を超える来訪者を迎えました。旅行口コミサイトであるトリップアドバイザーの「新潟市観光ランキング」では第1位を獲得したほか、「外国人来訪者に聞いた新潟市の地域資源に関する認知度ランキング」（2017年度）でも同様に第1位となるなど、新潟を代表する観光スポットの一つとしての地位を確立しています。

2018年には、酒蔵の入り口ともいえる直売店の空間がリニューアルされ、「日本酒ブティック」として生まれ変わりました。広々としたテイスティングスペースが設けられ、多様な銘柄をじっくりと味わうことができるようになりました。また、多目的スペースも用意され、将来的には酒造りに関するワークショップやトークライブなどのイベント開催、さらには外国人観光客を対象としたインバウンド向けの旅行プランなども計画されており、より開かれた酒蔵として新たな展開を目指しています。

今代司酒造は、「錦鯉」をはじめとする革新的な銘柄や、伝統的な製法に基づいた純米酒シリーズなど、幅広いラインナップを展開しています。品質への揺るぎないこだわりと、時代に合わせた柔軟な発想で、日本の伝統文化である日本酒の魅力を国内外に発信し続けています。

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