伊藤健

伊藤 健

1971年生まれの伊藤健氏は、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科で特任准教授を務めるとともに、特定非営利活動法人ソーシャルバリュージャパンの代表理事として活動しています。社会起業論や非営利組織の社会性評価を専門とし、特に社会的インパクト評価およびソーシャルインパクトボンド（SIB）の研究においては、日本の第一人者と目される研究者であり、またその実践を牽引する実務家でもあります。

経歴

国内大学在学中から非営利活動にスタッフとして深く関わり、その後、台湾への留学を経験しました。日系メーカーでの勤務を経て、経営学をさらに深く学ぶため渡米。米国サンダーバード国際経営大学院（Thunderbird Global School of Management）で経営学修士（MBA）課程を修了しました。卒業後はGE Internationalに入社し、業務プロセスの劇的な改善を目指すシックス・シグマの手法を適用した業務改革や、企業買収後の事業統合プロセスにコーポレート・ファイナンス部門の一員として携わりました。

2008年にGE社を退職した後、社会起業家の育成と支援を目的とするNPO法人ISL社会イノベーションセンターの統括ディレクターに就任。ここでは、社会起業家の成長を後押しするプログラムの企画・運営に尽力しました。

2010年からは慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科に移り、特任助教、特任講師を経て、2023年より特任准教授として教鞭をとっています。大学では主に社会的インパクト評価に関する研究を進めてきました。

ソーシャルバリュージャパンの設立と活動

社会における生産性の向上と社会課題の解決を促進することを目的として、伊藤氏は特定非営利活動法人ソーシャルバリュージャパン（設立当初は特定非営利活動法人SROIジャパン）を設立しました。代表理事として、社会的インパクトを定量的に評価する手法の研究、その普及に向けた教育、そして実際の評価実施を積極的に推進しています。また、社会的インパクト評価の手法を応用し、ソーシャルインパクトボンド（SIB）の開発や導入支援を行うなど、社会投資の新たな形を日本に根付かせるための取り組みを主導しています。

社会活動と政策形成への貢献

伊藤氏は、ソーシャルバリュージャパンの代表理事を務めるほか、アジアのベンチャーフィランソロピーを推進するAsian Venture Philanthropy Networkの東アジア地域統括や、国際的に活動するNPOである特定非営利活動法人かものはしプロジェクトの理事を務めるなど、国内外の様々な社会活動組織で重要な役割を担っています。

さらに、その専門知識と実務経験を活かし、数多くの政府や公共機関の委員会で委員や委員長、主査として政策形成や調査研究に貢献しています。例えば、国際協力機構（JICA）のBOPビジネス評価、G8社会的インパクト投資タスクフォース、文部科学省の地域振興や子供の貧困対策に関する調査研究、経済産業省のヘルスケア分野におけるSIB検討会委員長、内閣府の社会的インパクト評価検討WG主査など、その活動範囲は多岐にわたります。これらの委員会の活動を通じて、社会的インパクト評価やSIBといった新しい概念を日本の政策や実務に導入・定着させる上で中心的な役割を果たしてきました。

研究成果の発信

研究者・実務家として、伊藤氏は多数の著作、論文、寄稿などを通じてその知見を広く発信しています。共著に『社会イノベーションの科学』（勁草書房）、『日本のソーシャルビジネス』（日本政策金融公庫総合研究所）、『日本における社会的投資の最前線』（日本財団社会的投資推進室）、『社会的投資市場形成に向けたロードマップ』（日本ファンドレイジング協会）などがあります。また、査読付き論文を含む学術論文や、国内外の専門誌への寄稿も多数あります。

学会活動も活発で、日本評価学会や日本NPO学会などの国内学会に加え、韓国やドイツ、米国など海外の国際学会でも、社会的インパクト評価やSROI（社会的投資収益率）、社会的投資といったテーマで口頭発表を行っています。さらに、『The Guide to SROI』や『A Technical Guide to Social impact Bond』といった国際的な標準やガイドラインの監訳も手がけるなど、海外の最新動向を日本に紹介する役割も担っています。

これらの活動を通じて、伊藤健氏は社会課題解決に向けた効果的な取り組みを評価し、資金循環を促進する新しい仕組みを日本社会に導入・普及させる上で、学術的、実践的、政策的な側面から多大な貢献を続けています。社会の未来をより良くするための彼の継続的な努力は、多くの関係者から注目されています。

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