伊賀牛

伊賀牛（いがぎゅう）

伊賀牛は、三重県の伊賀地方で生産される黒毛和種の牛肉です。豊かな自然と伝統的な飼育方法によって育まれ、その品質の高さから「幻の牛肉」とも呼ばれています。

歴史

伊賀牛の歴史は古く、鎌倉時代の1310年に書かれた『国牛十図』には、すでに伊賀牛に関する記述が見られます。当時から、伊賀牛は干し肉として体力づくりのために食されていました。

江戸時代には、伊賀忍者の保存食として伊賀牛の干し肉が用いられていたという説もあります。明治時代に入ると、三重県が畜産振興のために兵庫県但馬地方から種牛を導入し、本格的な伊賀牛の生産が始まりました。

1905年には、金谷清三郎が伊賀牛の肉を東京に出荷し、商品化の先駆けとなりました。1953年には伊賀牛振興協議会が設立され、品質の維持・向上に努めています。近年では、アメリカやアジアへの輸出も行われるようになり、その名は世界に広がりつつあります。

生産・流通

伊賀地方は、周囲を山に囲まれた盆地であり、寒暖差の大きい気候が特徴です。この気候は、暑さに弱い牛の飼育に適しており、伊賀牛の生育を支えています。

伊賀牛として認められるには、いくつかの厳しい条件があります。まず、黒毛和種のメスの未経産牛であること。そして、最終肥育地と最長肥育地が伊賀管内（伊賀市・名張市）であり、12か月以上伊賀で飼育されていること。さらに、伊賀産肉牛生産振興協議会の会員が飼育・管理した牛であることが求められます。

伊賀牛の流通の特徴は、肥育農家から精肉店が直接1頭丸ごと買い付けるという取引形態が一般的であることです。精肉店は、血統や毛の色つや、目の輝きなどを見極めて牛を選びますが、実際に購入した牛の肉質が期待通りであるとは限りません。しかし、それを含めて伊賀牛を買う醍醐味だと考えられています。

味わい

伊賀牛は、その香りとコク、とろけるような柔らかさが特徴です。地元では、松阪牛に匹敵する味わいと評されており、伊賀市には伊賀牛料理を提供する飲食店が多くあります。精肉店が併設された店舗もあり、新鮮な伊賀牛を味わうことができます。

地域での特別な位置付け

伊賀牛は、地元住民にとって特別な存在です。その知名度が上がることを願いつつも、地元だけの秘密にしておきたいという複雑な感情を抱いています。そのため、地域外ではなかなか味わう機会がなく、「幻の牛肉」と呼ばれることもあります。

しかし近年では、高齢化による肥育農家の廃業も見られることから、伊賀ふるさと農業協同組合などが県外出荷と輸出の拡大を進めています。2018年時点では、肥育農家のうち7戸が輸出向けに伊賀牛を出荷しており、その輸出先はアメリカ、シンガポール、香港、台湾などに広がっています。

伊賀牛をモチーフにしたキャラクター

伊賀牛集団・部位3（Vスリー）というローカルヒーローがいます。地元の伊賀牛PR企画で誕生しました。

伊賀牛は、その美味しさだけでなく、歴史や文化、地域の人々の想いが詰まった特別な牛肉です。ぜひ一度、その味わいを体験してみてください。

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