佛光寺

佛光寺：歴史と文化が織りなす真宗寺院

京都市下京区に位置する佛光寺は、真宗佛光寺派の本山寺院です。渋谷山を山号とし、阿弥陀如来を本尊として祀ります。室町時代には、浄土真宗の別系統である本願寺を凌駕するほどの勢力を誇っていたと伝えられています。正式名称は「佛光寺」で、「仏光寺」と表記される場合もありますが、これは新字体です。

創建と揺籃期の佛光寺

寺伝によれば、承元元年（1205年）承元の法難で越後国に流罪となっていた親鸞が、赦免後京都に帰還した際に山城国山科郷に寺院を創建したとされています。しかし、この説には史料上の裏付けが乏しく、親鸞は越後から直接関東に向かったという説が有力です。

実際には、了源という人物が創建に関わっており、親鸞の子孫である本願寺覚如に寺名を命名してもらったとされています。佛光寺教団の直接の母体は、武蔵国の荒木門徒と阿佐布門徒です。了源は、本願寺存覚の協力を得て、光明本尊・絵系図・名帳などを用いた布教活動に尽力し、畿内以西における真宗念仏の拠点となりました。

元応2年（1320年）、了源は教化活動の拠点を京都東山の今比叡汁谷（現在の京都国立博物館付近）に移転しました。この移転を佛光寺の創建とするのが史実です。この頃、了源は親鸞の住房を山科の草庵に再興したとも伝えられており、この草庵を現在の佛光寺の起源とする見方もあります。

寺号の由来については、後醍醐天皇が瑞夢を見たことや、盗難にあった阿弥陀如来像が発見された霊験によるものとする寺伝もありますが、実際には了源と存覚の意思決定によるものだったと考えられています。

本願寺との関係と興隆、そして衰退

元亨元年（1321年）、覚如によって親鸞の廟堂が寺院化され、「本願寺」と名付けられました。これが、現在の浄土真宗本願寺派の始まりです。

移転後の佛光寺は多くの参詣者を集め、隆盛を極めました。了源の妻であった了明尼は、女性として初めて佛光寺9世法主に就任したという記録もあります。一方、当時の本願寺は青蓮院の末寺に過ぎず、勢力は弱かった。

応仁の乱（1467年）では、佛光寺も諸堂を焼失する被害を受けました。その後、文明13年（1481年）には、佛光寺の有力末寺48坊のうち42坊が本願寺の蓮如に帰依し、興正寺を建立して本願寺に宗旨替えするという大事件が起こり、佛光寺の勢力は大きく衰えました。

豊臣秀吉による移転と近世以降

天正14年（1586年）、豊臣秀吉の要請により、佛光寺は現在の五条坊門の龍臥城に移転しました。これは、旧境内を方広寺大仏の造営用地として提供するためでした。この際、残った6坊も佛光寺の近くに寺基を移しています。

江戸時代には、佛光寺住持と6坊の住持が寺院運営に携わるようになりました。これらの6坊は、それぞれ大善院、光薗院、長性院、久遠院、教音院、昌蔵院と改称されました。室町時代以降は、二条家の猶子となり、妙法院門跡の許で得度する慣習がありました。

明治時代には、渋谷姓を名乗り、1896年（明治29年）には管長渋谷隆教が男爵を授爵されました。現在の門主は渋谷真覚です。

現在の佛光寺と境内

現在の佛光寺は、本堂である阿弥陀堂をはじめ、大師堂、宗務所、庫裏、鐘楼などが建ち並んでいます。阿弥陀堂と大師堂は、明治時代に再建されたものです。境内には、お茶所や和合所といった施設があり、現代的な商業施設としても活用されています。

佛光寺は、重要文化財に指定されている木造聖徳太子立像をはじめ、多くの文化財を所蔵しています。また、毎年11月には御正忌報恩講が行われるなど、現在も盛んに宗教活動が行われています。かつて本願寺をしのぐ勢力を誇った佛光寺の歴史と文化に触れることができる貴重な寺院です。

もう一度検索