便利堂

株式会社便利堂の歴史と業務

株式会社便利堂は、京都市中京区に位置する老舗の美術印刷・出版会社です。この会社は、美術書の図版印刷や古美術の複製品制作、美術館や博物館の図録、絵はがきの制作などで知られており、特に19世紀にフランスで生まれたコロタイプ印刷を行う世界唯一の工房を持っています。

歴史の沿革

第一期：中村弥二郎時代（1887年～1901年）

便利堂は1887年に中村弥二郎によって「便利堂書店」として創業されました。彼は当時15歳で、古本や貸本の販売を含む多角的なビジネスを展開しました。この頃、彼は滑稽雑誌『文藝倶楽部』を発行し、様々な著名な作家や画家と繋がりを持つようになりました。

この他にも、内村鑑三との出会いがあり、彼の著作『後世への最大遺物』を出版したことは特筆すべき出来事です。この出会いは、弥二郎にとって出版人としての野心を掻き立てる重要な契機となりました。

第二期：中村弥左衛門時代（1901年～1925年）

次男の弥左衛門は、便利堂の基礎を固めました。彼は1905年にコロタイプ印刷所を設立し、この精緻な印刷技術は多くの美術書や絵葉書に利用されるようになりました。また、絵葉書ブームにも乗り、豊富な絵葉書を発行しました。この時期には法隆寺や清水寺からの依頼も受け、図録制作を着手しました。

第三期：田中伝三郎時代（1925年～1930年）

弥左衛門の死後、三男の伝三郎が引き継ぎます。彼は短い期間でしたが、原色版印刷の部門を設立し、多色印刷に対応する体制を整えました。この品質の高い技術は便利堂の工房に根付いていきました。

第四期：中村竹四郎時代（1930年～1960年）

竹四郎がやがて事業を引き継ぎ、多角的な事業を展開しました。特に、古美術複製制作の技術は高く評価され、重要文化財の保存に貢献することが多くありました。彼の発案により、法隆寺金堂の壁画を原寸大で撮影し、その複製事業も手がけました。

便利堂の文化財複製

便利堂は、文化財の複製事業を進める上で特に「展示・研究のための複製事業」、「危険分散のための複製事業」、「ご分身としての複製事業」、「複製による元の姿の再現」に力を入れています。これにより、重要な文化財を後世に伝える役割を果たしています。

現在の取り組み

現在も、便利堂はコロタイプ印刷を続け、世界唯一のコロタイプ工房としてその技術を受け継いでいます。最新のデジタル技術を取り入れながら、独自の技術開発を進めています。また、国宝事典の編纂や新たな美術出版物の発行など、文化財の保存と普及に寄与し続けています。

便利堂は、その設立から現在に至るまで、京都の文化と美術に深く根付いた存在であり続けており、今後も真摯な姿勢で事業を展開していくことでしょう。

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