個室ひかり

個室ひかり（こしつひかり）について

個室ひかりは、日本の国鉄がかつて企画した寝台設備を備えた新幹線車両で、1982年に設計図が完成したものの、実際の製造には至らず、未成車両として歴史に名を刻んでいます。この車両の計画は、国鉄が苦境に立たされていた1981年から始まりました。特に東海道・山陽[[新幹線]]の開業や、夜行高速バスの普及により、従来の寝台特急の利用客が減少していた背景があります。

計画の背景

1981年、国鉄の経営が厳しくなる中、既存の寝台特急の利用者が減少し、それに伴い寝台車両の新たな需要が求められていました。国鉄は、新幹線の利便性を生かし、夜行便に寝台設備を導入することで、寝台特急の需要を取り戻そうとしました。しかしながら、計画は多くの課題に直面しました。

製造費用の確保が難しく、また新幹線の車両に装備する際の騒音問題も深刻でした。これらの問題により、個室ひかりの計画は一度は却下されてしまいましたが、構想は残されました。

構造

個室ひかりは、新幹線100系電車をベースにした2階建て車両として計画されていました。特筆すべきは、食堂車を設けないという点でしたが、特に夜行便のスケジュールを考慮したダイヤも企画されていました。この車両は、東京を午後8時に出発し、博多には午前10時に到着するというもので、効率的な移動を提供する意図がありました。

また、深夜から早朝にかけての騒音を軽減するために、一部の中間駅で午前0時から午前6時までの停車を計画しており、運行の安全性や快適性を重視した設計になっていました。

製造中止

1982年には設計図が仕上がり、試作車の製造に向けた動きがあったものの、国鉄再建政策や騒音問題が解決されないままだったため、製造計画は白紙撤回されてしまいました。このように、個室ひかりは製造を待たずに幻の新幹線車両となります。製造中止後も、個室ひかりに関する情報は鉄道ファンの間で語り継がれ、同じく製造が中止された新幹線荷物・郵便輸送車両と並んで、鉄道史における興味深いエピソードの一つとして位置付けられました。

参考文献と関連項目

個室ひかりに関する情報を知りたい方には、JTBパブリッシングから出版された『幻の国鉄車両』（2007年発行）がおすすめです。また、個室ひかりに関連する車両としては、中国の高速鉄道CRH2型電車が新幹線E2系を基にした寝台車や、新幹線961形電車の4号車に設置された寝台設備などが挙げられます。このように、個室ひかりは新幹線車両の中で特別な位置を占めており、日本の鉄道史における興味深いエピソードとなっています。

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