健康寿命

健康寿命（けんこうじゅみょう）

健康寿命とは、人が生涯のうちで、恒常的に医療や介護の支援を必要とせず、自身の力で心身を維持し、自立した日常生活を送れる期間を指す言葉です。英語では Health expectancy または Healthy life expectancy（略称：HALE）と呼ばれます。

概念の定義と平均寿命との関係

一般的に広く知られている「平均寿命」が、生まれた時点からの平均的な生存年数、すなわち「命の長さ」を示す指標であるのに対し、健康寿命は文字通り「健康な状態での生存期間」、つまり「命の質」に焦点を当てた指標と言えます。

平均寿命と健康寿命の間には、「日常的な医療・介護に依存して生活を送る期間」が存在すると考えられます。理想的には、平均寿命と健康寿命がほぼ一致する、つまり亡くなる直前まで自立した健康な生活を送れることが望ましいとされています。健康寿命が平均寿命より短い場合、その差は、不健康な状態や介護が必要な状態で生活する期間を示すことになります。

概念の提唱と重要性

この健康寿命という概念は、世界保健機関（WHO）によって2000年に提唱されました。以来、世界各国で健康政策を立案する上で非常に重要な指標として認識されるようになっています。

健康寿命の延伸が重要視される理由は複数あります。まず、個人の視点からは、自立した健康な生活を送れる期間が長いほど、その人の生活の質（QOL: Quality of Life）が向上し、より豊かで活動的な人生を送ることができます。次に、社会全体の視点からは、人々が健康で長く自立した生活を送ることは、医療費や介護費といった社会保障費の抑制に繋がります。特に高齢化が進む多くの国々では、持続可能な社会保障制度を維持するためにも、健康寿命を延ばすことが喫緊の課題となっています。

このような背景から、WHOはもちろんのこと、各国政府や保健医療政策を担う行政機関（例えば日本の厚生労働省など）は、国民の健康寿命を延ばすこと、そして平均寿命に占める健康寿命の割合を高めることを、重要な政策目標として掲げています。

算定方法

健康寿命の算定にはいくつかの方法があります。代表的なものとしては、サリバン法（Sullivan method）、カッツ法（Katz method）、ロジャース法（Rogers method）などがあります。日本で公的な統計として採用されているのは、サリバン法に基づいた計算方法です。これらの算定方法によって算出される健康寿命の値は異なる場合があるため、比較する際には同じ方法で算定されたデータを用いる必要があります。

関連情報

健康寿命に関する国際的な比較や統計データは、国の健康寿命順リストなどを参照することで確認できます。また、関連する概念として、病気や障がいによって失われた健康な生命年数を測る「障害調整生命年（DALY）」や、健康状態による生活の質を考慮した生存期間を示す「質調整生存年（QALY）」などがあります。これらの指標もまた、人々の健康状態や医療介入の効果を評価するために用いられます。

健康寿命の延伸に向けた取り組みは、個人の健康意識の向上、予防医療の推進、健康的な生活習慣の普及、社会参加の促進など、多岐にわたる分野で進められています。

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