障害調整生命年

障害調整生命年（DALY）とは

障害調整生命年（Disability-Adjusted Life Year、DALY）は、健康が損なわれた期間を評価するための指標です。この概念は、早死や病気、障害によって失われた年数を合算して、全体的な疾病負荷を示すものです。1990年にハーバード大学が世界銀行のために開発し、その後、2000年に世界保健機関（WHO）により導入され、この指標は公衆衛生の分野で幅広く活用されています。

DALYの構成

DALYは、「早死にによる失われた年数（YLL）」と「障害によって損失された健常年数（YLD）」の合計として定義されます。この計算式によって、死亡率だけでなく、病気や障害による生活の質の低下も考慮に入れることが可能となります。

• - DALY = YLL + YLD

また、DALYは、流行病学的健康指標として重要な役割を果たし、さまざまな疾患の影響を測る手段として用いられています。特に、その効用は、疾病の重篤さや影響を一目で把握できる点にあります。

社会的重み付け

DALYの計算において、年齢による社会的重み付けが重要な考慮事項となります。一般的に、若年層の健康損失は高く評価され、逆に高齢層の損失は相対的に低い評価を受ける傾向があります。この理由は、教育への投資や生産性の観点から、社会が若年層に対して期待している価値が大きいことに起因します。大規模な研究では、年齢によってもたらされる評価の差異が見られ、新生児や青年の死亡に対して特に高いDALY値が適用されます。これが、健康の損失が社会全体に与える影響を評価するのに役立ちます。

国別のDALYの例

オーストラリアの場合、がん、心臓病、メンタルヘルスの問題、神経疾患、慢性呼吸器疾患、糖尿病などが、平均余命を損なう主な要因となっています。これらの疾病によるDALYの計算は、公衆衛生政策の策定や評価において重要な指標となります。

また、心的外傷後ストレス障害（PTSD）のようなメンタルヘルスの問題も、特にアジア太平洋地域や米国で顕著に影響を及ぼすことが示されています。これにより、心理的健康の重要性が再認識され、より良い公衆衛生戦略の必要性が浮き彫りになっています。

DALYの歴史と使われ方

DALYは、1990年に発表された「グローバル疾病負荷」研究において初めて提唱され、その後WHOによって重要な指標として位置づけられています。この研究を通じて、DALYは比較分析や政策評価の重要なツールとなり、各国の公衆衛生戦略に影響を与えてきました。

2000年及び2004年の調査では、周産期疾患や下気道感染症、HIV/AIDS、うつ病などがDALYの割合において重要な位置を占めることが明らかになっています。これにより、特定の疾患に対する理解が深まり、健康政策の方向性が導かれることとなりました。

結論

障害調整生命年は、病気による健康の喪失を総合的に評価するための重要な指標です。DALYを用いることで、さまざまな疾患が人々に与える影響を定量的に理解し、それを基に公衆衛生政策を展開することが可能になります。

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