入院患者

入院患者（にゅういんかんじゃ）

アーサー・コナン・ドイルによる短編小説『入院患者』は、シャーロック・ホームズシリーズの中でも特に注目される作品の一つです。1893年に発表された本作は、ドイルの代表作として多くの読者に親しまれています。この物語は、精神病の治療を手掛けるトレヴェリアン医師が中心となり、彼の医院で起きる謎の事件を描いています。

あらすじ

物語は1880年代後半の10月に始まります。トレヴェリアン医師は、精神病の権威として知られる医師ですが、彼には自身の医院を開設する資金が不足していました。そんな折、彼はブレシントンという投資家から援助を提案されます。ブレシントンは、開業資金を負担する代わりに、医院の利益の25%を得る契約のもと、トレヴェリアンの入院患者として同居することになります。医師の名声により医院は繁盛し、ブレシントンは著名な資産家となるのですが、数週間前に彼が近くでの強盗事件を気にかける様子を見せます。この事が物語の導入部となります。

2日前、トレヴェリアンは患者の父親の診察についての手紙を受け取ります。父親とその息子が来院するが、診察中に突然患者が姿を消してしまいます。翌日、彼らは再び診察に現れ、その晩、トレヴェリアンはブレシントンに自身の部屋への侵入者がいたことを告げられます。この状況から、ブレシントンはホームズに真相解明を依頼します。

ホームズが医院を訪れると、ブレシントンはピストルを持って彼を迎えます。この緊張したやりとりの後、ブレシントンは次の日、自ら首を吊った状態で発見されます。警察は自殺と判断しますが、ホームズはブレシントンの死に不審を抱きます。彼は詳細な捜査を行い、部屋に残された足跡と吸引された葉巻の吸い殻から、ブレシントン以外に3人の男性がいたことを確認します。

さらに、ホームズはブレシントンが過去の強盗団の一員だった可能性に思い至ります。彼は、仲間が出所したことを知ったことから不安を抱いていたと思われ、再び事件に巻き込まれたのは偶然ではないと推測します。強硬症の患者とその息子を装った3人は医院を訪れ、ブレシントンの元に侵入する計画を立てていました。次の日の診察でも彼は散歩中で不在だったため、夜中に忍び込んで彼を拘束します。

この結果、ブレシントンは彼らの手によって命を奪われました。ホームズの推理によれば、ブレシントンの仲間は恨みを晴らすために再び彼に近づき、悲劇の展開を迎えました。物語の結末では、恨みのゆえに殺人に至った彼らの行方は分からないままとされています。恐らく、アメリカへと向かう途中で沈没した客船に乗っていた可能性があるのではないかと考えられています。

この作品は、ダークなテーマや緊張感を持つストーリー展開が評価され、シャーロック・ホームズシリーズの中でも特に印象深い一編となっています。

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