共同親権

共同親権とは

共同親権とは、離婚や別居後も、両親が協力して子どもの養育に関わる親権形態です。この制度は、子どもの福祉を最優先に考え、両親の役割を重視する考えに基づいています。共同親権には、主に「共同法的親権」と「共同身体的親権」の2つの側面があります。

共同法的親権

共同法的親権とは、子どもの教育、医療、宗教など、重要な意思決定を両親が共同で行う権利です。これにより、離婚後も両親は子どもの成長に重要な役割を果たし、子どもの情報を共有し、協力して子育てを行うことが可能になります。

共同身体的親権

共同身体的親権とは、子どもが両親の家で過ごす時間を分担する親権形態です。子どもの生活の拠点を両親間で共有することで、子どもは両親との関係を維持し、安定した環境で成長することができます。この際、両親間で子どもと過ごす時間は均等である必要はなく、子どもの状況や両親の都合に合わせて調整されます。

単独親権との違い

共同親権の反対概念として、単独親権があります。単独親権は、離婚後、子どもの親権を一方の親が単独で持つ形態です。この場合、子どもは主に一方の親と同居し、もう一方の親は面会交流権を持つことがあります。また、共同親権とは異なり、兄弟姉妹が別々の親と同居する「分割親権」も存在します。

各国の状況

共同親権の制度は、各国で異なっています。以下に、いくつかの国の状況を紹介します。

アメリカ合衆国

アメリカでは、47州が共同監護の形態を法律で定めています。離婚後の共同親権は、裁判所の認可を受けた監護計画（Parenting plan）に基づいて行われます。また、監護計画の立案を援助する民間の調停機関やビジテーションセンターなどが存在します。アメリカでは、共同親権の内容は州によって異なり、共同法的親権と共同身体的親権の両方、またはどちらか一方を共有する場合があります。また、状況によっては単独親権となることもあります。

イギリス

イギリスでは、婚姻中も離婚後も共同親権が原則です。離婚後の共同親権は、裁判所に提出した子のアレンジ申告書（Statement of Arrangements for Children）に基づいて行われます。CAFCASSという機関が総合的なサポートを提供し、子ども面接交渉センターが面会交流をサポートします。

イタリア

イタリアでは、共同親権が原則であり、離婚後の共同監護が一般的です。メディエーションを行う民間団体が、親権に関する紛争解決を支援します。

ドイツ

ドイツでは、婚姻中および離婚後も共同親権が原則です。教育や医療などの重要事項は、両親が協議して決定します。少年局が、合意形成や面会交流を援助します。

日本

日本では、婚姻中は民法により共同親権が定められています。しかし、離婚後は単独親権となるため、親権を巡って夫婦間で紛争が生じることがあります。近年、離婚後も共同親権を認めるべきという議論が高まっています。2024年には、離婚時に父母の協議で共同親権か単独親権かを選択でき、合意できない場合は家庭裁判所が判断する改正民法が成立しました。

日本における共同親権の議論

日本における共同親権の議論は、子どもの権利条約批准を機に活発化しました。離婚後も両親が子どもの養育に関わる権利を保障するべきという主張が強まり、国会でも共同親権制度の導入を求める請願が提出されました。2024年の法改正により、離婚後の共同親権が導入されることになりましたが、今後も制度の運用や課題について議論が続けられるでしょう。

共同親権のメリット・デメリット

共同親権は、子どもにとって多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも指摘されています。

メリット

子どもの精神的な安定: 両親が協力して子育てに関わることで、子どもは両親からの愛情を十分に感じ、精神的に安定して成長することができます。
両親の責任感の向上: 共同親権は、両親に子育てに対する責任感を促し、子どもとの関係を良好に保つことができます。
両親間の紛争の減少: 共同親権は、子どもの親権を奪い合うという状況を避け、両親間の紛争を減らす効果があります。
経済的安定: 共同親権では、両親が子どもの養育費を分担するため、子どもはより経済的に安定した生活を送ることができます。

デメリット

子どもの負担: 両親の家を頻繁に行き来するような場合は、子どもに負担がかかる可能性があります。
両親間の教育方針の違い: 両親の教育方針や生活様式が異なる場合、子どもが混乱する可能性があります。
遠方への引っ越し: 共同親権の場合、遠方への引っ越しが難しくなることがあります。
親同士の対立: 親同士の関係が悪い場合、共同親権が子どもの精神的な負担となることがあります。

共同親権が親子に及ぼす影響

共同親権は、子どもと親の両方に様々な影響を与えます。

子どもの発達: 共同親権で育てられた子どもは、両親が揃っている家庭の子どもと遜色ない発達を示すことが多いです。一方、単独親権では、子どもの発達に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。
子どもの満足感: 共同親権は、子どもに高い満足感を与えることが多いです。
親同士の争いの減少: 離婚後の共同親権は、子どもの奪い合いを減らし、親同士の争いを減少させます。
親の育児負担軽減: 単独親権の場合と比較して、共同親権の場合、親の育児負担が軽減されます。

世論調査

離婚後の共同親権を支持する意見は、多くの国で高まっています。世論調査の結果では、共同親権を支持する人が大多数であり、子どもの福祉を最優先に考えるという観点から、共同親権の必要性が認識されています。

結論

共同親権は、子どもの最善の利益を考えた親権形態です。離婚後の子どもの養育において、両親の役割は非常に重要であり、共同親権は、その両親の責任を明確にし、子どもの健全な成長をサポートする制度であると言えます。今回の日本における法改正は、この考え方を法的に認める大きな一歩と言えるでしょう。

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