刑務作業

刑務作業：世界各国の制度と現状

刑務作業は、受刑者が刑務所内で従事する作業を指します。その目的や形態は国によって異なり、単なる懲罰ではなく、受刑者の更生支援や社会復帰促進を目的とする場合が大半です。本稿では、日本の刑務作業制度を詳細に解説するとともに、アメリカ合衆国、イギリス、ドイツ、フランス、ブラジル、タンザニアなど、他国の制度との比較を行います。

日本の刑務作業制度

日本では、懲役刑は刑務作業を伴うことが刑法で規定されています。作業内容は生産作業（物品生産）、社会貢献作業（除草、除雪など）、自営作業（刑務所内での炊事、洗濯など）、職業訓練の4種類に大別されます。刑務作業の収益は国庫に帰属し、2020年度は約28億円に上りました。

受刑者には作業報奨金が支給されますが、金額は決して高くなく、2021年度の平均月額は4,516円でした。これは、刑務作業が自由契約に基づく労働ではなく、法令で定められた義務であるため、労働基準法は適用されません。しかし、労働災害に対する手当金なども用意されています。

明治時代初期には、北海道の炭鉱などで囚人が強制労働に近い状況に置かれていましたが、現在の刑務作業は、受刑者の更生・社会復帰支援を目的としており、作業時間は法令により1日8時間以内と定められています。近年では、出所後の雇用を考慮し、一部刑務所で8時間労働の導入が進んでいます。網走刑務所で考案された郷土玩具「ニポポ」は、刑務作業の代表的な事例と言えるでしょう。

各国の刑務作業制度

アメリカ合衆国： 州によって制度が異なりますが、連邦規則では身体的・精神的に可能な受刑者に対して作業が割り当てられます。カリフォルニア州では、受刑者消防隊が山火事対策などに従事し、高時給を得るケースもあります。

イギリス： 刑務作業は刑罰の内容ではなく、既決被収容者に対する義務とされています。

ドイツ： 受刑者は作業または労作の義務を負いますが、刑務作業は受刑者にとって利益となるものでなければならず、適切な設備の整備が求められます。過去には、作業報酬金の低さが問題視され、違憲判決が出されたこともあります。

フランス： 受刑者に作業義務はなく、施設長の許可を得て作業に従事できる制度です。

ブラジル： 多様な刑務作業が行われており、ミナスジェライス州では、自転車発電による作業が社会貢献の一環として実施されています。

タンザニア： 2018年には、当時の大統領が受刑者を無料の労働力と発言し、昼夜を問わず働かせるべきと主張したことが問題となりました。

刑務作業の課題と展望

刑務作業は、受刑者の更生支援という重要な役割を担っていますが、報酬の低さ、労働環境、人権問題など、様々な課題が残されています。国際的な人権基準に則り、受刑者の尊厳を尊重し、社会復帰を支援するような制度設計が求められています。また、作業内容の多様化、職業訓練の充実なども重要な課題です。刑務作業制度は、犯罪者更生と社会安全保障という社会全体の課題と深く関わるものであり、今後も継続的な議論と改善が不可欠です。

参考文献

法務省ホームページ、各国の刑法・行刑法令など。

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