剰余金

剰余金に関する詳細解説

はじめに

会社法および会計、そして財政法における「剰余金」は、それぞれ異なる文脈で用いられる重要な概念です。本稿では、これらの概念を包括的に解説し、その違いと共通点を明らかにします。

1. 会社法・会計における剰余金

会社法における剰余金は、株主への配当を可能にする資金源です。具体的には、純資産から資本金と資本準備金を差し引いた金額と定義されます（会社法第446条）。会計上は、株主資本を構成する払込資本（資本金など）と留保利益から剰余金が算出されます。この際、資本剰余金（資本準備金を含む）と利益剰余金に分類される点に注意が必要です。会社法上の剰余金には資本準備金が含まれないため、会計上の分類と会社法上の分類は厳密には一致しません。

1.1 剰余金の分類

資本剰余金: 新株発行や資本取引によって生じる剰余金。資本準備金、その他資本剰余金（資本金及び資本準備金減少差益、自己株式処分差益など）が含まれます。
利益剰余金: 損益取引から生じる剰余金で、利益の留保額。利益準備金、その他利益剰余金（任意積立金、繰越利益剰余金など）が含まれます。

1.2 会社法における剰余金の取扱い（抜粋）

会社法（2006年施行）では、剰余金の配当や処分に関する規定が詳細に定められています。以下、重要な条項を抜粋します。

配当に関する株主の権利: 株主は、剰余金の配当を受ける権利を有します（第105条1項1号）。
種類株式: 株式会社は、剰余金の配当について異なる定めをした種類株式を発行できます（第108条）。
剰余金の算出: 剰余金の算出方法は法律で規定されています（第446条）。
資本金の増加: 資本剰余金を減額して資本金を増額できます（第450条、会社計算規則第48条）。
準備金の増加: 剰余金を減額して準備金を増額できます（第451条）。
剰余金の配当: 剰余金の配当には株主総会決議が必要で、配当財産の種類と帳簿価額を定めなければなりません（第454条）。株式、社債、新株予約権は配当財産とできません。
* 配当の制限: 配当には制限が設けられています（第461条）。

1.3 剰余金の歴史

2005年改正前の商法では、「剰余金」は貸借対照表の「資本の部」を構成する区分の一つでした。会社法の施行により、「配当可能利益」や「利益配当」に代わって「分配可能額」と「剰余金の配当」という用語が採用され、剰余金は会社の財務政策においてより重要な概念となりました。

2. 財政法における剰余金

財政法における剰余金は、歳入と歳出の差額を示す「歳計剰余金」です。これは、翌年度の歳入に繰り入れられます（財政法第41条、地方自治法第233条の2）。地方自治体では、条例や議会の議決により、基金への編入も可能です。さらに、「純剰余金」（歳計剰余金から歳出繰越財源所要額と税の増収による地方交付税総額の増加額を差し引いたもの）の半分以上は、国の財政では公債償還に、地方自治体の財政では積み立てや地方債償還に充てなければなりません（財政法第6条、地方財政法第7条）。

3. まとめ

会社法・会計、財政法における剰余金は、それぞれ異なる意味合いを持ちますが、いずれも財務状況を示す重要な指標です。それぞれの定義と運用方法を理解することで、企業や政府の財政状況を正確に把握することができます。それぞれの分野における詳細な規定は、関連法規を参照ください。

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