南極料理人

映画『南極料理人』について

『南極料理人』は、西村淳の著作を基にした2009年公開の日本映画です。この作品は、北極観測隊の生活と人間関係をユーモラスに描いており、主演を堺雅人が務めています。映画は第50回日本映画監督協会新人賞の最終候補作品となり、2009年度新藤兼人賞金賞や第29回藤本賞新人賞など、多くの賞を受賞しています。

撮影の背景

南極地域の厳しい環境での撮影は、実際の南極ではなく、真冬の北海道網走市で行われました。基地内のシーンはセットで作られ、撮影は東宝スタジオで行われました。この作品が描く自然環境は、観測隊員たちが直面する過酷さを強調する重要な要素です。

ストーリーの要約

物語は1997年にセットされています。海上保安庁の主計士である西村淳は、急遽第38次南極地域観測隊の一員として南極大陸のドームふじ基地に派遣されます。彼は妻と3人の子どもを置いてきた状態で、8名の隊員の食事を準備する任務を担っています。

ドームふじ基地は、標高3810メートルに位置し、マイナス54度以下という厳しい環境です。このため、基地内には生物やウイルスなどは存在せず、隊員たちは氷を削り出して水を作り出す必要があるのです。水を守るため、知らぬ間に節水が徹底されていく中、西村は食事を通して隊員たちのストレスを和らげようと奮闘します。

初めは打ち解けていなかった隊員たちも、共同での遊びや食事を通じて友情を深めていきます。しかし、食べ物が限られ、特にインスタントラーメンが尽きたことで緊張が増し、ストレスから争いが生じるようになります。「ラーメンショック」と呼ばれる事態が発生する中、衛星電話で家庭に連絡する際の高い料金に悩まされたり、プライバシーがないトイレに頭を抱えたりと、日常生活の厳しさを描写します。

登場人物

西村淳の他にも、個性あふれる隊員たちが登場します。

• - 金田浩（タイチョー）: インスタントラーメンが大好きな気象観測担当。
• - 本山秀行（本さん）: 雪氷観測担当で、経験豊富な科学者。
• - 御子柴健（主任）: おもしろいが、少し不真面目な車両担当。
• - 平林雅彦（平さん）: 水の無駄遣いに敏感な大気観測担当。

それぞれが持つ特性や背景がストーリーに彩りを添え、さらには西村の家庭での様子やその思い出が強く描かれています。

食事を通じた物語

映画中では、様々な料理が登場します。例えば、鮮やかなぶりの照り焼きや、伊勢海老のエビフライ、さらには西村が自作した手作りラーメンなど、毎回隊員たちの笑顔を広げるアイテムとして機能しています。また、その料理の裏には家庭への思い、特に西村の妻との思い出がつい表れ、彼を支える力となっているのです。

結末

西村は赴任期間を終え、帰国しますが、極端な環境を経て味覚の変化に驚く場面で締めくくられるこの映画は、極限の中でも人間関係や食事が持つ力を強調しています。『南極料理人』は、一見不便でもその中で見いだされる友情や連帯感を描いており、人生や家庭の大切さを再認識させてくれる作品となっています。

もう一度検索