古野まほろ

古野まほろ：警察官僚から本格派ミステリー作家へ

古野まほろ氏は、日本の小説家、推理作家として知られています。その経歴は異彩を放ち、東京大学法学部卒業、リヨン第三大学法学部での修士課程修了、さらにはフランス内務省からの免状授与など、学術的なバックグラウンドが際立っています。国家公務員一種試験に合格し、警察庁に入庁。交番勤務から警察庁といった様々な部署での経験を経て、警察大学校主任教授として退官しています。

警察官僚としてのキャリアを経て専業作家となった古野氏は、デビューから約10年で長編小説20作品、短編集を含めると25作品以上を刊行するなど、旺盛な創作活動を展開しています。その作品群は多様性に富み、本格派推理小説、警察小説、さらにノンフィクション作品まで網羅しています。

代表作と作風

古野氏を代表する作品群として、まず挙げられるのが「天帝シリーズ」です。1990年代の日本帝国という架空の世界を舞台に、高校生の古野まほろ（作者と同名）が事件を解決へと導く物語は、奇書『虚無への供物』の影響を受けており、独特の文章表現が特徴です。当て字やルビの多用、現代語・文語・外国語の混在など、実験的な試みが随所に見られます。

初期の作品では、この「天帝シリーズ」に加え、「探偵小説シリーズ」「セーラー服と黙示録シリーズ」など、共通したパラレルワールドを舞台とした作品を発表していましたが、近年は異なる世界観の作品も多数発表しています。

多くの作品に本格派推理小説としての側面があり、「読者への挑戦状」とも言うべき難解な謎解きが特徴です。また、作者自身をモデルにした登場人物が登場する作品もあり、作家が自身の分身を登場させるというミステリーにおける一般的な作劇手法を用いています。

多様なシリーズと作品群

古野氏の作品は「天帝シリーズ」以外にも数多くのシリーズ作品が存在します。

探偵小説シリーズ: 女子高生探偵が活躍するシリーズ。本格派でありながら前衛的な実験も試みられています。
イエユカシリーズ: 天帝シリーズにも登場するキャラクターを軸に、本格ミステリの要素が凝縮された作品群です。
二条実房シリーズ: 警察小説でありながら本格ミステリの手法を取り入れた、警察官の青春物語。
セーラー服と黙示録シリーズ: フーダニット、ハウダニット、ホワイダニットの三層構造で謎を解き明かすユニークなシリーズです。
外田警部シリーズ: 倒叙形式ミステリ。刑事コロンボを彷彿とさせる、執拗な質問と逆トリックが特徴です。
新任シリーズ: 新任の警察官の視点から組織を描いた作品。
* 臨床真実士ユイカシリーズ: 臨床心理士が事件を解決するシリーズ。

これら以外にも、単発作品や、警察庁を舞台にした作品、現代社会を鋭く切り取る作品など、古野氏の作品群は非常に多岐に渡ります。

物議を醸した発言とTwitter炎上

2017年、北海道大学推理小説研究会による古野氏の新刊批評ツイートに対し、古野氏本人が強い反論をツイートしたことが大きな話題となりました。この出来事をきっかけに、古野氏のTwitterアカウントは炎上状態となり、その後アカウントを削除しています。この騒動は、作家と読者、そして大学の研究会との関係性について、多くの議論を巻き起こしました。

ミステリランキングでの評価

古野氏の作品は、数々のミステリランキングで上位にランクインするなど、高い評価を得ています。特に「天帝シリーズ」は多くの読者から支持を集めており、その人気はミステリ界において確固たるものとなっています。

警察小説・ノンフィクション

ミステリー小説以外にも、警察行政に関するノンフィクション作品を多数発表しています。『警察手帳』など、警察内部の視点からの著作は、警察官僚としての経験に基づいた貴重な情報が満載です。これらの作品は、ミステリー小説とはまた異なる角度から、警察組織や社会問題について考察しています。

古野まほろ氏は、警察官僚としての経験と高い知性、そして多彩な執筆活動を通して、読者に多くの刺激と驚きを与え続けている作家と言えるでしょう。

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