吉徳

株式会社吉德

株式会社吉德（よしとく、英: Yoshitoku Co., Ltd.）は、日本の伝統文化を支える日本人形の製造販売を主業とする老舗企業である。東京都台東区浅草橋に本店を構え、「顔がいのち。」という印象的なキャッチコピーで広く知られている。

歴史

その創業は古く、正徳元年（1711年）にまで遡る。これは江戸時代中期の出来事であり、実に300年を超える長きにわたり、人形づくりの伝統を守り続けている、国内でも最古級の歴史を持つ企業の一つである。

初代である治郎兵衞は、時の将軍、徳川家宣公より「吉野屋」の屋号を授けられたことを機に、雛人形や手遊（おもちゃ）を扱う問屋として「吉野屋治郎兵衞」と名乗った。その名は当時の江戸の文書にも記録が残されており、創業当初から一定の地位を確立していたことがうかがえる。

六世以降の当主は「德兵衞」と名を改め、以来、代々当主はその名を継承し、現代に至るまで十二世が「山田德兵衞」としてその伝統を受け継いでいる。現在の商号である「吉德」は、かつて名乗っていた「吉野屋徳兵衛」が略されて定着したものであると伝えられている。

吉德の歴史は順風満帆ではなかった。大正12年（1923年）の関東大震災や、第二次世界大戦末期の東京大空襲など、未曽有の災害により、大切にしてきた店舗は幾度も壊滅的な被害を受けた。しかし、その度に吉德は不屈の精神で立ち上がり、創業の地である浅草橋の地で再建を果たし、営業を再開してきた。この創業以来変わらぬ所在地へのこだわりは、困難に屈しない吉德の歴史の重みを物語っていると言える。

暖簾分け

江戸時代には、吉德から数多くの暖簾分けが行われ、その技術と信用が多くの人々に受け継がれた。中でも特筆すべきは、文久2年（1862年）に分かれた現在の株式会社久月である。吉德と久月は、ともに江戸時代を起源とし、人形業界を代表する双璧として、今日まで日本の人形文化の発展に貢献し続けている。

現代の取り組みと事業

伝統的な日本人形の製造販売を主軸とする一方で、吉德は常に新しい試みにも挑戦している。例えば、世界的に人気の高い映画「スター・ウォーズ」シリーズのキャラクターであるダース・ベイダーやストームトルーパーをモチーフにした日本人形を企画・販売するなど、異色のコラボレーションを展開。2008年に開催された「スター・ウォーズ・セレブレーション ジャパン」にも出展し、話題を呼んだ。

また、近年ではフリュー株式会社のホビーブランド「F:NEX」とのコラボレーションにより、ライトノベル原作の人気テレビアニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」のキャラクター「ラム」を日本人形として立体化した1/4スケールフィギュアを発売するなど、現代のポップカルチャーとの融合も積極的に図っている。これらの取り組みは、伝統技術の新たな可能性を示し、若い世代へのアピールにも繋がっている。

販売網は全国に広がり、直営店として浅草橋本店をはじめ、荒川流通センター店、大和店、札幌店、小倉店の計5店舗を展開しているほか、全国各地の特約店、主要百貨店、専門店でもその商品を取り扱っている。

事業所については、本店（台東区）に加え、大和店、大阪支店、名古屋支店、福岡支店、札幌支店、広島支店といった主要都市に拠点を置いている。また、営業本部、オリジナル事業部、商品本部、流通センターといった機能部門は、東京都荒川区に集約されている。

300年を超える歴史の中で培われた確かな技術と信用、そして時代の変化にしなやかに対応する柔軟性が、吉德を日本の人形業界における揺るぎない地位へと導いている。

関連項目

東都のれん会
山田徳兵衛 (吉徳第10代当主)
* 山田徳兵衛 (吉徳第11代当主)

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