嘉禄の法難

嘉禄の法難について

嘉禄の法難（かろくのほうなん）は、法然が亡くなった後、浄土宗が圧力を受けた歴史的な事件です。この事件は、法然の教えを広める浄土宗が延暦寺の影響力の強い天台宗によって弾圧されたことから始まります。法然の死から15年が経過した嘉禄3年（1227年）、浄土宗の専修念仏はより一層広まり、特に法然の命日には大規模な法要が行われていました。これに対し、天台宗の僧たちは嫉妬心から苦々しい思いを抱いていました。

事件の背景

法然の弟子である多念義の隆寛が、天台宗の僧定照から『選択本願念仏集』を批判する文書『弾選択』を受け取りました。隆寛は反論として『顕選択』を発表し、定照を論破しました。これを受けて、延暦寺の僧侶たちは、専修念仏を行う者を見るたびに暴力的な行動に出ました。最終的に、天台座主は朝廷に浄土宗の僧侶たちを流罪に処すよう訴え、法然の墓を破壊し遺骸を鴨川に流すことを求めました。これに対し、証空は朝廷に弁明書を提出し、命を救われましたが、他の三人の僧侶は流罪にされました。

事件の進展

その後、延暦寺の僧兵が無断で法然廟所を襲撃し、破壊活動を行いました。この事態を知った浄土宗の僧侶たちは、法然の遺骸を鴨川に流す計画があることを知り、信空と覚阿の指導のもと、法然の遺骸を掘り起こし嵯峨の二尊院に移すことを決定しました。出家者や武士団が大勢集まり、護衛を行う中で、二尊院に遺骸を運びました。

この移送の計画は、延暦寺側に察知されることとなり、今度は証空が主導となり、円空がいた広隆寺の境内にある来迎院に遺骸を再度移しました。このように、浄土宗は何度も法然の遺骸を守るために奔走しました。

その後の展開

7月には、隆寛は陸奥、幸西は壱岐、空阿は薩摩に流されることとなり、10月には延暦寺の僧侶たちが浄土宗の『選択本願念仏集』の版木を焼き捨てる事態にも至りました。天台宗は浄土宗に対する圧力を強め続けました。翌年の安貞2年（1228年）1月、再び法然の遺骸は幸阿の念仏三昧院に運ばれました。法然の十七回忌にあたる25日、その遺骸は信空、証空、覚阿、幸阿、円空と共に火葬された後、遺骨は各地に分骨されました。

このように、嘉禄の法難は浄土宗と天台宗との間の深い対立を浮き彫りにし、法然の教えの光を後世に残す重要な事件となりました。

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