嘘をもうひとつだけ

『嘘をもうひとつだけ』

『嘘をもうひとつだけ』は、人気作家東野圭吾による短編推理小説集で、加賀恭一郎シリーズの第6作にあたります。この作品は、2000年に講談社から初版が出版され、2003年には文庫版が登場しました。また、収録された短編の一部はテレビドラマ化もされ、視聴者に親しまれています。

収録作品について

本書には複数の短編が収められており、それぞれが独立した物語を展開しています。登場人物たちは各々の事件に直面し、それぞれの人生や背景が描かれています。作品の魅力は、一見無関係に思える事件が、深い人間関係や過去の出来事に紐づいている点にあります。以下に各短編のあらすじを簡単にまとめました。

「嘘をもうひとつだけ」

弓削バレエ団に勤務していた事務員・早川弘子が自宅マンションの植え込みで発見され、警察は彼女がバルコニーから転落したと推測します。彼女は引っ越したばかりで、新たな人生を始める矢先でした。事件を担当する刑事・加賀恭一郎は、同じマンションに住む寺西美千代に注目します。美千代は早川の同僚であり、彼女との関係が事件の鍵を握っていると考えられます。加賀の鋭い洞察力が、潜む真実を明らかにしていく過程は、読者を釘付けにします。

「冷たい灼熱」

田沼洋次は、自宅で妻の美枝子が倒れているのを発見します。部屋は荒れ、幼い息子は行方不明。警察は夫に疑いをかけますが、真実はどうでしょうか？ 「冷たい灼熱」は、家庭内の事件が生み出す深い悲劇と、家族の絆を描いた物語となっています。

「第二の希望」

体操の夢を追いかける楠木真知子は、交際相手・毛利周介が不自然な状況で発見されたことから、彼女の人生が揺れ動きます。彼女は娘に自身の夢を託そうとしますが、真実の影に潜む犯人は誰なのか。作品は、希望と絶望が交錯するがゆえに、ますます目が離せなくなります。

「狂った計算」

坂上奈央子は夫の死後も生活を続けていますが、事件の解明に向けて加賀が事件に関わることになります。彼女の心情と、行方不明になった建築士との関係が、事件のカラクリを暴く鍵となります。加賀の推理力が試される中、人間の業が描かれます。

「友の助言」

加賀の友人である萩原保の事故がきっかけで、加賀は真実を求め始めます。友人の襲った事故の裏に潜むトリックを解明することで、彼自身の過去にも触れることになり、思わぬ真実を知ることになります。

最後に

『嘘をもうひとつだけ』では、短編毎に異なる事件が描かれ、加賀恭一郎の洞察力と人間関係が複雑に絡み合っていきます。各作品の中で描かれるキャラクターたちの信念や葛藤が、物語をより深くしています。推理小説ファンには必見の一冊となることでしょう。

もう一度検索