土屋光逸

土屋 光逸 (つちや こういつ)

土屋光逸（1870年9月23日 - 1949年11月13日）は、明治から昭和期にかけての著名な浮世絵師および版画家である。彼は小林清親の弟子としてその足跡を刻み、多くの絵画を世に残した。

生い立ちと経歴

土屋は静岡県浜松市に生まれ、家族は農業に従事していた。幼少時代から絵に対する強い情熱を持っており、14歳の時に上京して寺に入ったが、住職には向かないと見抜かれ、松崎秀明堂での弟子生活を経て、16歳で小林清親のもとに入門した。清親の弟子の中で最も若く、家族同様の扱いをされながら、清親の画業を手伝いながら日常の家事も担当していた。

作品の展開と成長

光逸は明治28年(1895年)頃から「光逸」の名のもとに木版画を出始め、「講和使談判之図」や「万々歳凱旋之図」などの作品が知られている。この時期、多くの弟子たちが去る中で、光逸と数名は清親の元に残り、共に困難な日々を過ごした。彼は清親から技術を学ぶ一方で、家事や事務仕事も担い、絵描きとしての修行に専念することができなかった。

明治33年（1900年）に結婚し、家庭を持った彼は、その後も清親を支え続けた。しかし、明治44年(1911年)に妻を失い、続く数年間には親しい人々を次々と亡くし、彼自身も病に悩まされることとなった。

新しい挑戦と創作活動

1918年に二度目の結婚を果たすが、再び配偶者を早くに失いました。大正11年（1922年）からは神奈川県茅ヶ崎市南湖に移り、生活を基盤にしつつ創作活動を続けた。ここで関東大震災に見舞われるも、その後は新たな妻と共に落ち着きを取り戻し、中国向けの絹本画を多く手がけながら糊口を凌いだ。

1931年、彼は新版画の分野に本格的に足を踏み入れることになります。出会った渡辺庄三郎の助けを得て、新版画の制作を行うよう励まされ、数々の風景画を発表しました。特に東京の風景を取り入れた作品が多く、名作として知られる「雪の堅田浮見堂」や「日比谷の月」などが代表的です。

晩年と影響

晩年には、戦争の影響で新たな作品の制作が難しくなる中、縁起物や掛軸を手がけて生活を支えていました。特に鍾馗の絵が得意であり、需要があったとされています。1949年に肺炎で亡くなるまで、光逸は日本の版画界に多大なる影響を与え続けました。彼の多くの作品は、現在でも評価され、所蔵館で展示されています。

作品の一部

• - 講和使談判之図　錦絵　大錦3枚続
• - 雪の堅田浮見堂 および 日比谷の月 木版画
• - 宮島、天の橋立、松島 木版画
• - 三井寺晩鐘など

土屋光逸は、彼の作品を通じて日本の画壇における重要な存在として知られ、その技術や美的感覚は今も多くの人々に愛されています。彼の生涯を追体験することで、明治から大正にかけての日本の文化や芸術がどのように変化してきたのかを感じられるでしょう。

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