大日本国一宮記

『大日本国一宮記』とは

『大日本国一宮記』は、室町時代に編纂された日本の一宮に関する重要な書籍であり、『群書類従』の第二輯「神祇部」巻第二十三に収められています。この文献は、日本国内の一宮に関する情報を網羅しており、祭神や鎮座地、社名といった詳細が記されています。特に、その内容は67社の一宮に焦点を当てており、各神社の名称や祭神、鎮座地が明記されているのが特徴です。

特徴と構成

この記録は、「一宮記」として知られる類似の資料が多数存在する中でも、特に重要視されています。『大日本国一宮記』は、神社名やその祭神について、各地の一宮の特色を詳述しており、最後には「右諸国一宮神社如此。秘中之神秘也」という言葉で締めくくられています。この文章は、編纂者が一宮に対する特別な思いを表しているとも考えられます。

文中では、特定の神社が本地垂迹説に基づいて記載されている様子も伺えます。たとえば、安房国と豊後国については、異なる神社が同じ社名として記載されており、このことから編纂者が現地調査を行ったのではないという推測も成り立ちます。また、特定の社名に関しては、特定の人物の影響があるとも考えられており、鹿児島神社の注記には「兼右云。」と記載されていることから、16世紀の吉田兼右の時代に成立したものであるという見解もあります。

研究への影響

『大日本国一宮記』は一宮の研究にとって欠かせない資料であり、今なお一宮巡りや取材において基準として用いられることがあります。実際、近世の文献や巡拝者がこの書を参照することが多く、江戸時代初期の神道者である橘三喜は、全国の一宮を巡る際に『大日本国一宮記』とその類本を手にしていました。伴信友が著した『神社思考』にも、この書が参照され、当時の神々について言及されています。

異本と比較

また、この資料には数多くの写本が存在し、原書との異同が見受けられる点も重要です。『大倭国一宮記』や『日本国一宮記』など、他の資料と内容が類似していることから、『大日本国一宮記』の一類と考えられています。これらの本を通じて、漢文で記載された祭神や別称についても精緻な理解が求められます。

まとめ

『大日本国一宮記』は、単なる一宮の一覧表だけでなく、日本の神社に関する歴史や文化を知るための重要な手掛かりとなる資料です。その独自の視点や記載の背景を探ることで、当時の宗教観や社会構造についての理解が深まります。現代においても、その影響は色濃く残っており、様々な形で一宮の魅力を伝えています。

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