本地垂迹

本地垂迹とは

本地垂迹（ほんじすいじゃく）とは、日本における神仏習合の思想の一つで、神道の神々が仏（菩薩や天部を含む）の化身であるとする考え方です。この概念は、仏教の伝来とともに発展し、神々の存在を仏教的に理解するための枠組みを提供しました。

本地と垂迹の意味

「本地」とはその本来の境地や姿を指し、「垂迹」は神仏が世に現れることを表します。究極の本地は宇宙の真理そのものである法身とされ、これを本地法身（ほんちほっしん）とも呼びます。また、「権現」という言葉の「権」は「臨時」や「仮」を意味し、仏が神の形を取り現れることを示しています。

背景と発展

本地垂迹の思想は、仏教の伝播が進む中で、各地の土着の宗教を包摂する傾向が強まったことに起因しています。多くの天部の神々はヒンドゥー教からの影響を受けています。後期大乗仏教においては、本地仏大日[[如来]]の化身として不動[[明王]]などが位置づけられました。
中国の『荘子』における教化の理念も、この思想の形成に寄与しています。中国での「迹」に関する論考が、後に僧肇によって仏教に取り入れられ、菩薩の教化を理解する手助けとなりました。

日本では仏教の伝来により、古墳時代において物部氏と蘇我氏の対立が見られましたが、時間が経つにつれて仏教と古来の神々の信仰は徐々に融合していきました。仏教側は神々を衆生の一種とみなし、神々を仏の境地へ導くための活動が行われるようにもなりました。

神々と仏の関係

7世紀後半には、天皇中心の国家体制が整えられ、国造りに重用される神々が民族神として高められていきました。仏教側もまた、これらの神々に敬意を示し、護法善神として位置づけました。この流れの中で、神に菩薩号が付けられるようになりました。
一方で、小規模な民族神については本地垂迹の考えを適用せず、例えば権化神と実類神の区別が設けられました。

本地垂迹説の発展

本地垂迹の思想は、権現造りや本地垂迹図画の創作にも結びつきます。鎌倉時代には、さまざまな文学作品に影響を及ぼし、神々の描かれ方は変化を見せました。また、戦国時代には「諸宗はひとつ」とする思想が広まりました。

末法思想との関連

社会の動乱や不安定さを背景に、末法の世への救済願望が強まる中で、浄土信仰が栄えました。新しい仏教の宗派が登場し、神々の存在が個人の救済へと焦点が当てられるようになったことが、本地垂迹説の根底にあります。

反本地垂迹説

鎌倉時代中期には、逆に神が主で仏が従うとする神本仏迹説が現れました。この考え方は、神道側が仏教から独立しようとする試みから生まれました。度会氏による伊勢[[神道]]の基盤作りは、その一環です。
反本地垂迹説は、神国思想の影響を受けてさらに発展し、南北朝時代から室町時代にかけて強く主張されました。

垂迹神と本地仏

日本における神々の仏号は多岐にわたり、特定の神に対して異なる仏号が付与されることがあります。
多くの神々は菩薩としての姿を持ち、例えば天照大御神は大日[[如来]]、八幡神は阿弥陀如来とされています。

歴史的展開

9世紀頃から、各神の権現号が確認され、12世紀にはそれぞれの神の本地仏も定められていきました。この過程で本地垂迹は日本独自の宗教的景観の一部として深化し続けました。

参考文献

ここでは、関連する重要な文献や研究についても言及しました。それにより、本地垂迹の全貌やその影響をより深く理解する手助けになります。

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