大織冠

大織冠について

大織冠（たいしょっかん）は、日本の冠位制度における最上位の冠位であり、647年から685年まで用いられました。この冠位は、大化3年に制定された七色十三階冠の制に基づいており、冠そのものも「大織」と呼ばれることがありました。この冠位は、小織冠とともに存在し、単に「織」とも称されました。大織冠の最も特徴的な要素は、その独自性であり、歴史上大臣には授けられなかったため、この冠位を持つ者は藤原鎌足ただ一人でした。

制定と歴史的背景

大織冠の設置は、冠位制度の制度改革の取り組みの一環でした。従来の冠位十二階では、大臣が着用する紫冠が明確に位置づけられていませんでした。しかし、七色十三階冠の制定により、紫冠は上から5、6番目に位置することとなりました。その代わりに、大織冠や小織冠が最上位とされ、630年代から670年代にかけての冠位制度に新たな変化をもたらしました。これにより、持つ者の尊厳や立場が一層明確化されたと言えるでしょう。

大織冠そのものは、織物で作られ、金銀で装飾された鈿が付けられていました。規則としては、深紫色の衣装が求められ、その装飾や色使いからも高貴さが感じられます。このように、素材や色彩からも特別な地位を示すものであったと考えられています。

唯一の授与者と記録

記録に残る大織冠の授与者は内臣として仕官していた中臣鎌足だけです。天智天皇に信任され、彼は死の前日である669年に大織冠を受け取ったとされています。この時から彼は「大織冠」として知られることとなり、優れた地位を象徴する冠として歴史に刻まれました。鎌足に関する伝記『藤氏家伝』上巻には「大織冠伝」として彼の功績が記されています。

外国の王との関連

また、大織冠に関する面白い逸話は、662年に百済の王子である豊璋に対して授与された織冠に関する記録です。この際に授与された冠については、大織または小織のいずれかであったとの具体的な記録は存在しませんが、冠位制度の発展に外国の王に対しても恩恵を与える可能性があったいう視点があります。これは、唐が高句麗や百済、新羅の王に相当の官を授けたことを踏まえたものであり、冠位の国際的な重要性を示唆しているとも言えます。

最後の変革

大織冠は685年に、天武天皇14年1月21日に制定された冠位四十八階制によって廃止され、新たな冠位制度が整備されました。これにより、日本の冠位制度は大きな転換点を迎えます。大織冠が持っていた独自の位階は、これ以降の日本の位階制度の中では見られなくなっていったのです。

参考文献

• - 武光誠『日本古代国家と律令制』（吉川弘文館、1984年）

関連項目

• - 冠位・位階制度の変遷
• - 大職冠 (幸若舞)

大織冠は、日本の歴史における冠位制度の中でも特に重要な意義を持ち、その運用と意味は文化的・政治的に大きな影響を及ぼしました。

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