天と地

オリバー・ストーン監督による感動の戦争ドラマ『天と地』

『天と地』（原題：Heaven & Earth）は、1993年に公開されたオリバー・ストーン監督によるアメリカ映画です。同監督のベトナム戦争三部作『プラトーン』（1986年）、『7月4日に生まれて』（1989年）に続く作品であり、レ・リー・ヘイスリップの回顧録『When Heaven and Earth Changed Places』と『Child of War, Woman of Peace』を基に制作されました。

映画は、1949年、フランス領インドシナ時代のベトナム中部キー・ラ村で生まれたレ・リー・ヘイスリップ（ヘップ・ティ・リー）の生涯を描きます。彼女は両親の愛情に包まれて育ちますが、国境地帯という村の立地から、幼い頃から戦争の影に晒されることになります。

兄たちが北ベトナムのハノイへ旅立ち軍人となる中、レ・リーはベトコン側に協力する役割を担います。しかし、共和国軍兵士の進軍情報をベトコンに通報したことで逮捕・拷問され、釈放後もベトコンからスパイと疑われレイプされるという悲劇に見舞われます。村人からも疑いの目を向けられ、彼女は故郷を離れざるを得なくなります。

サイゴンでは富豪の屋敷で使用人として働くレ・リーは、主人アインと恋に落ち、彼の子供を身ごもりますが、アインの妻に知られ、故郷近くのダナンへと追いやられます。母親と共に生活するも、母親は商売に失敗し故郷へ帰還。レ・リーは姉キムの元に身を寄せますが、娼婦として働く姉からも厄介者扱いされ、米軍基地のゴミ収拾場や売春へと身を落とすことになります。

その後、病に倒れた父親を見舞うため故郷へ戻ったレ・リーは、娼婦になった自分を恥じるも、父親から立派な母親になるよう励まされます。しかし、父親は服毒自殺で亡くなります。

その後、韓国軍のカジノで働き生活が安定したレ・リーは、アメリカ海兵隊軍曹のスティーヴ・バトラー（トミー・リー・ジョーンズ）と出会い結婚します。しかし、ベトナム戦争の激化により二人は離ればなれになり、ベトナムの崩壊後、アメリカへ移住します。

アメリカでの生活は順風満帆とはいかず、スティーヴは戦争後遺症と失業に苦しみ、アルコール依存症に陥ります。夫婦仲は悪化し、離婚、スティーヴの自殺という悲劇に見舞われます。

それでもレ・リーは子供たちを育て上げ、不動産業と飲食業で成功を収めます。そして13年後、息子たちを連れてベトナムへ戻り、故郷で暮らす家族と再会。戦争と平和、アメリカとベトナムという狭間で生きてきた自身の運命を受け入れることで、レ・リーは新たな人生の幕を開けるのです。

この映画は、喜多郎が音楽を担当しており、同年度のゴールデングローブ賞作曲賞を受賞しています。また、Rotten Tomatoesでの評価は賛否両論ありますが、レ・リーの壮絶な人生と、戦争の残酷さを描いた力強い作品として高く評価されています。キャストにはヘップ・ティ・リー、トミー・リー・ジョーンズ、ジョアン・チェンなどが出演しています。

『天と地』は、戦争の悲劇と、その中でたくましく生きる女性の生き様を描いた、忘れられない感動巨編です。戦争の爪痕、愛と喪失、そして再生という普遍的なテーマが織りなす物語は、観る者の心に深く刻まれるでしょう。

もう一度検索