女禍

幻の自主制作アニメ『女禍』：ゲゲゲの鬼太郎二次創作の異端

『女禍』は、1989年に同人サークル「鬼太郎座」が制作した自主制作アニメーションです。水木しげる原作のテレビアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』（1985年 - 1988年）を基にした二次創作であり、上映時間は30分。

特筆すべきは、原作者である水木しげる本人が公認し、公式に関わる人物も参加している点です。しかし、著作権の問題から営利目的の上映は不可能であり、現在まで一般公開はされていません。まさに幻のアニメと言えるでしょう。

キャッチコピーは「ゲゲゲの鬼太郎スーパーダイナビジョン」「今……世界が 闇にのみこまれようとしている。」。

制作の背景

1986年頃、『ゲゲゲの鬼太郎』のファンであった有里紅良が中心となり、ファンサークル「鬼太郎座」が発足。有里が元虫プロダクションのフィルム編集技師であったことから、本格的なオリジナルアニメーションの制作が開始されました。

制作にあたっては、企画段階から水木しげるに製作趣旨を説明し許可を得ています。脚本と絵コンテも水木の監修を受けている徹底ぶりです。

1988年には声優のキャスティングが行われ、目玉おやじ役には公式声優である田の中勇が起用されました。

一個人の企画であったため、資金面など様々な困難がありましたが、全国のファン約1000人が協力し、約3年の歳月をかけて制作されました。制作状況は、隔月発行の通信紙「瓦版」で伝えられていたそうです。

1989年には、神田パンセホールにて完成上映イベント『妖怪ちゃんぽん上映会』が開催され、水木しげる本人も完成作を視聴しています。上映会の様子を伝える「瓦版」の発行をもって「鬼太郎座」は解散しました。

映像素材の保管状況は不明ですが、当時参加した関係者にはVHSが配布されており、当事者間での上映会などは行われていたようです。

1998年に発行された公式本『水木しげる&京極夏彦 ゲゲゲの鬼太郎解体新書』に本作のことが記載されたこともあります。

あらすじ

封印されていた中国神話の創造神・女禍が、安田という青年によって甦ります。

女禍は、目覚めるためのエネルギーを得るため、妖怪たちを吸収。完全に復活すると、強力な呪力によって日本が現世から消失してしまいます。

女禍から生き延びた鬼太郎、猫娘、地獄童子の三人は、今来野教授の力を借りて、三種の神器を用いて女禍を再び封印しようとします。

登場人物

鬼太郎: 主人公。地獄童子に事件解決を依頼されます。髪の色は原作に準じたグレー。
目玉おやじ: 女禍の犠牲となります。
猫娘: 鬼太郎・地獄童子と共に女禍から逃げ延び、女禍と戦います。本作では鬼太郎の恋人という設定です。
地獄童子: 鬼太郎に事件解決を依頼し、共に女禍へ戦いを挑みます。
安田精次郎: 今来野教授の助手。遺跡盗掘を行い呪詛を使う術師となり、女禍を復活させます。
今来野教授: 考古学者。鬼太郎らを救い、事件を理解できる唯一の人間として知識を授けます。
* 女禍: 中国神話の創造神。妖怪たちを吸収し、完全復活を目論みます。




『女禍』は、水木しげる作品への愛情と、自主制作アニメーションならではの熱意が込められた作品です。一般公開されていないのが惜しまれますが、その存在は、ゲゲゲの鬼太郎のファンにとって特別なものと言えるでしょう。

もう一度検索