嬉野流

嬉野流（うれしのりゅう）について

嬉野流は将棋における戦法の一種で、アマチュア棋士の嬉野宏明によって創造されました。2015年には元奨励会三段の天野貴元がこの戦法に独自の研究を加え、書籍として発表したことで将棋界での認知度が高まりました。この戦法は、プロ棋士でも採用されており、2023年には嬉野が升田幸三賞を受賞するなど、注目を集めるようになりました。

基本概念と出端

嬉野流の特徴的なスタートは初手の▲６八銀にあります。この手は一般的なオープニングの流れとは異なり、居玉の状態で相手に速攻を仕掛けるという意外性があります。特に初手に続く三手目の▲７九角が嬉野流の代名詞となっており、左銀を用いて斜め棒銀に進むスタイルが特徴です。この戦法は奇襲に分類される場合が多いですが、天野は「戦法自体の優秀性は奇襲を超えている」と語っており、藤井聡太もこの戦法を評価していることから、単なる奇襲に留まらないものだと認識されています。

嬉野流では、相手が居飛車または振り飛車のいずれの場合にも対策が研究されており、これによりプロ棋士も数多くこの戦法を取り入れています。特に井上慶太などが実戦でこの戦法を用いたことで、その実力が証明されています。

攻撃戦略

嬉野流では、攻撃の基本形が確立されており、特に以下の手順が有名です。相手が居飛車の場合、先手は▲６八銀 △３四歩 ▲７九角 △８四歩 ▲７八金 △８五歩 ▲４八銀といった進行を行うことが多く、ここで▲８八歩によって土下座の歩を打つことが重要な戦略とされています。この指し方は、相手が棒銀で攻撃してきた場合に有利に働きます。

すなわち、嬉野流の基本的な展開は早期に相手を攻撃することが求められ、また相手の陣形が整う前に仕掛ける重要性があります。玉を固く囲うことが難しいため、柔軟に攻めに出る姿勢が求められます。

棒銀の受け方

嬉野流では、相手の棒銀を受ける独自のパターンがあります。基本的な受け方は、相手の銀が四段目に昇った場合、こちらの銀も同じ段に上げるというものです。この受け方を進めることで、相手の攻撃をうまく防ぎつつ、形勢を保つことができる場合が多いです。

対策と新嬉野流

嬉野流に対抗するための代表的な対策として、△４四角からの飛車交換を強要する手があります。これは特に嬉野流の指し手に対して非常に効果的です。しかし、これに応じた新たなアプローチとして「新嬉野流」が誕生しました。この新しい指し方は、従来とは異なる駒組みを提案し、より多様な戦略を可能にしています。

相振り飛車とプロ棋士の実戦

嬉野流は、振り飛車戦法との相性もよく、特に嬉野自身は中飛車や向かい飛車との組み合わせを積極的に取り入れています。プロ棋士の実戦では、嬉野流を使った例が少ない中でも、近年特定の棋士によって使用されるようになりました。このように、嬉野流はアマチュアの中で人気を得た後、徐々にプロの世界にも浸透しています。

受賞と影響

2023年には嬉野流の功績が評価され、嬉野宏明が升田幸三賞を受賞しました。この受賞はアマチュアとしては2004年の立石勝己以来の快挙であり、嬉野流の広がりと人気を物語っています。嬉野自身もこの知らせを受けた際には驚きを隠せなかったと述べており、その名声をさらに確立する結果となりました。嬉野流はなお進化し続け、今後の将棋界においても重要な役割を果たすことが期待されています。

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