子どもの貧困

子どもの貧困とは

子どもの貧困とは、単に経済的な困窮だけでなく、教育、医療、住居など、子どもが健やかに成長するために必要な資源が不足している状態を指します。これは、子どもの現在と将来に深刻な影響を与える社会問題です。

日本における子どもの貧困の現状

OECD（経済協力開発機構）の統計によると、日本の子どもの相対的貧困率は約14%であり、OECD加盟国の中でも高い水準にあります。これは、日本の子どもの約7人に1人が貧困状態にあることを意味します。

厚生労働省の調査では、2021年の子どもの貧困率（17歳以下）は10.6%となっています。これは、1985年以降で2番目に低い数値ですが、依然として深刻な状況です。特に、ひとり親世帯の貧困率は44.5%と高く、大きな課題となっています。

貧困が子どもに与える影響

貧困は、子どもたちの心身の健康、教育機会、将来の可能性に深刻な影響を与えます。

健康: 栄養不足や不衛生な環境により、病気にかかりやすくなります。また、必要な医療を受けられないこともあります。
教育: 学用品の購入が困難であったり、塾に通えないなどの理由で、学力に差が生じやすくなります。また、進学を諦めざるを得ない場合もあります。
将来: 貧困の中で育った子どもは、大人になっても貧困から抜け出しにくい傾向があります。これは、教育や就労の機会が限られているためです。

子どもの貧困の原因

子どもの貧困の原因は、複雑に絡み合っていますが、主な要因として以下の点が挙げられます。

ひとり親世帯の増加: 離婚や未婚の母の増加により、ひとり親世帯が増加しています。ひとり親世帯は、経済的に不安定になりやすく、貧困に陥りやすい傾向があります。
非正規雇用の増加: 非正規雇用は、賃金が低く、雇用が不安定であるため、貧困の原因となります。特に、女性の非正規雇用が多いことが、母子家庭の貧困に拍車をかけています。
社会保障制度の不備: 日本の社会保障制度は、高齢者向けには手厚いものの、子どもや子育て世帯への支援が十分ではありません。

子どもの貧困対策

日本政府は、2013年に「子どもの貧困対策推進法」を制定し、子どもの貧困対策に取り組んでいます。主な対策として、以下のようなものが挙げられます。

経済的支援: 児童扶養手当の支給、就学援助制度の拡充など
教育支援: 学習支援、居場所づくりなど
生活支援: 食料支援、相談支援など

地方自治体でも、独自の取り組みが進められています。例えば、東京都杉並区では、小学校教材費および中学校修学旅行経費の一部を助成しています。大阪市では、5歳児の教育費を所得制限なしで無料にする方針を打ち出しています。

養育費の問題

離婚後の養育費の不払いが、ひとり親世帯の貧困を深刻化させる要因となっています。養育費の取り決めや支払いを支援する制度の充実が求められています。

明石市では、養育費の保証契約を保証会社と締結した場合に、保証料を市が負担するモデル事業を開始しています。また、養育費不払者には氏名公表のペナルティも検討されています。

児童養護施設の問題

虐待や遺棄などの理由で児童養護施設に保護された子どもも、施設退所後に生活困窮に陥りやすい傾向があります。施設退所後の支援体制の強化が不可欠です。

児童養護施設出身者が性産業に従事する率は、非出身者の10倍、犯罪歴は40倍に上るとの国際調査結果もあります。また、自殺者は500倍の出現率となっています。

今後の課題

子どもの貧困対策は、まだ始まったばかりです。今後、以下のような課題に取り組む必要があります。

貧困の連鎖を断ち切るための包括的な支援: 経済的な支援だけでなく、教育、医療、就労など、様々な分野での支援を組み合わせる必要があります。
ひとり親世帯への支援の強化: 養育費の確保、就労支援、子育て支援など、ひとり親世帯が抱える課題に対応した支援が必要です。
地域社会との連携: 学校、NPO、企業など、地域社会全体で子どもたちを支える仕組みづくりが重要です。
* 貧困に関する正しい理解の促進: 貧困は、個人の責任ではなく、社会全体で取り組むべき問題であるという認識を広める必要があります。

子どもの貧困は、日本社会全体の課題です。子どもたちが希望を持って未来を切り開けるよう、社会全体で支援していくことが求められています。

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