安宅切

安宅切（あたきぎり）

安宅切は、日本の重要文化財に指定された室町時代の打刀であり、福岡市早良区にある福岡市博物館に収蔵されています。この刀は、備前で活躍した刀工・備前長船祐定によって作られたとされています。祐定は、長船派の一員であり、室町時代末期に著名な刀工として知られています。その技術は、同じ時代に活動した刀工の忠光や勝光らと並んで高く評価されています。

祐定について

備前長船祐定は、「末備前」と呼ばれる刀工集団の代表格であり、その名は光忠という先代の刀工から受け継がれています。ただし、祐定の名を持つ刀工は複数存在し、その数は60人を超えるとも言われています。このため、実際にどの祐定が安宅切を製作したのかは不明な点が多いですが、その技術と美しさは確かに他刀と一線を画しています。

名称の由来

安宅切の名前の由来は、1581年に豊臣秀吉の四国攻めで黒田如水が淡路国に渡り、安宅貴康を討ち取ったエピソードにあります。この戦いでは、黒田如水が安宅貴康の居城を攻め落とし、安宅切が使用されたと言われています。黒田如水の戦功を称えて、この刀は「安宅切」と呼ばれるようになったのです。

特徴的な作風

安宅切の刀身は、刃長が61.2センチメートルで、反りは2.4センチメートルです。茎の表面には作者の銘と、「あたき切 脇毛落」と書かれた金象嵌が施されています。この「脇毛」という表現は、一般的な試し切りの難易度を示すもので、安宅切が名刀であることを裏付けています。

特徴的な拵は、金霰鮫青漆打刀拵で、鞘には貴重な金の延べ板が使われ、青漆で飾られています。柄の部分は朱塗りの鮫皮で覆われ、固い巻き方が施されています。金無垢二重鎺が取り付けられ、台尻には「小判明寿」という文字が刻まれています。これは、安土桃山時代に活躍した埋忠明寿の作品であり、安宅切の制作時期が如水の没年までの数年間に収束することを示しています。

その他の情報

安宅切は、特にその使用の痕跡が顕著であり、切れ味の鋭さが証明されています。幾度となく試し切りに使用された結果、柄巻や金霰地に使用感が残っています。また、後に国宝に指定されるへし切長谷部のモデルとなったこともあり、その影響は当時の刀工に大きな影響を与えました。

このように、安宅切は単なる武器ではなく、日本の刀文化の重要な一部を成す存在であり、今後もその魅力が色あせることはないでしょう。

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