宝生流

宝生流の概要と魅力

宝生流（ほうしょう-りゅう）は、能楽の重要な流派の一つで、特にシテ方とワキ方（下掛宝生流）から成り立っています。一般に「宝生流」という場合、シテ方を指すことが多いです。この流派は、大鼓方の「宝生流」や「宝生錬三郎派」という流儀もかつて存在しましたが、1986年に観世流に名前を戻し、現在は主にシテ方だけが継承されています。

シテ方の特徴

シテ方は観世流に続く、能楽界の第二の規模を誇る流派です。この流派は、重厚な芸風とともに謡を特に重視しており、そのスタイルは「謡宝生（うたいほうしょう）」とも称されることがあります。宝生流の謡は、一般的に高い甲（かん）グリ音が特徴的で、観世流の名曲とは一線を画す魅力を持っています。2008年4月からは二十世である宝生和英が宗家を継承しています。

この流派の芸祖は観阿弥の長兄、宝生太夫です。宝生流の起源は奈良県桜井市の外山地区にあり、宗像神社にはその発祥を示す碑が設置されています。外山座は、当時の宝生太夫が名を取り、「宝生座」と呼ばれるようになりました。宝生座は、代々の宝生太夫が室町幕府に仕えながら、興福寺や春日大社、春日山といった重要な場で能を演じてきました。

歴史的背景

江戸時代には、特に五代将軍の徳川綱吉が宝生流の大ファンで、他の囃子方を宝生流に転籍させることがあったとされています。加賀藩主である前田綱紀からも支持を受け、加賀地方では金春流に代わって、宝生流がますます盛んになりました。現在でも北陸地方では「加賀宝生」として強い影響力を保っています。また、会津、南部、佐渡、久留米といった各地域でも宝生流の流れが根付いています。

十代将軍の徳川家斉もまた宝生流に親しみ、1848年には大規模な勧進能が行われ、江戸時代の最後の勧進能として知られています。明治時代には、宝生九郎知栄や松本金太郎といった名人が活躍し、その系譜から多くの重要無形文化財保持者が輩出されています。最近では、三川泉や近藤乾之助などが現在の名人として知られています。

宗家代々の系譜

宝生流の宗家は代々続いており、初代から現在の20代に至るまで、代々の家系が引き継がれています。初代は宝生蓮阿弥で、以降様々な名人たちが名乗りを上げ、流派の伝統を守り続けています。現在の宗家は宝生和英（19世の長男）で、多くの後継者がその道を歩んでいます。

ワキ方の立場

下掛りである金春流に属したワキ方の春藤流から分かれたワキ方宝生流もあり、しばしば「下掛宝生流」や「脇宝生」と称されます。この流派も江戸初期から続いており、当時の重要な人物である春藤流の金春権七祐玄が宝生座の一員となったことから始まります。明治時代の名人には宝生新、松本謙三などがいます。

現在の状況

2005年には、シテ方に270名、ワキ方に24名の能楽師が所属しており、現在でも活発に活動しています。シテ方とワキ方それぞれから多くの名人が輩出されており、伝統と革新の両方を体現し続けている宝生流の魅力は、今後も途切れることなく続いていくことでしょう。

このように宝生流は、現代にも多くの伝承者が存在し、能楽の重要な一部として文化的な意義を持ち続けています。

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