宝生新

宝生新の生涯と業績

宝生新（ほうしょう あらた／しん、1870年11月16日 - 1944年6月10日）は、能楽のワキ方として知られる宝生流の重要な存在であり、十世宗家としてその名を馳せました。本名は宝生朝太郎です。東京都日本橋に生まれ、名門の流派に育ちました。彼の父である宝生金五郎は九世宗家、伯父の八世宝生新朔もまた重要な能楽師でした。

新は7歳の頃に初舞台を踏み、その際には能楽の演目『猩々』でワキを務めました。若い頃から家族からの影響を受け、修行に励みましたが、16歳の時に一度舞台から離れます。しかし、27歳で復帰し、新という名を名乗り、1905年には10世宝生流家元に就任します。

1937年には初世梅若万三郎と共に、第一回の帝国芸術院の会員に選ばれる栄誉を受けました。新は特にその繊細な謡に定評があり、伯父の新朔に似た芸風を持っていました。彼の声は美しく、見た目も整っており、『隅田川』や『道成寺』といった名作のワキ役を務め、その時代を代表する名人として多くの観客を魅了しました。

彼の門下からは、松本謙三や宝生弥一、また森茂好などの優れた能楽師が育ち、彼の影響は今なお日本の伝統芸能に息づいています。また、彼は著名な文学者である夏目漱石に謡を教えたことでも知られています。

新の家族についても注目すべき点が多く、彼は宝生哲という子を持ち、女婿として森茂好を迎えました。娘の夫には宝生弥一が名を連ね、孫である森常好は後に宝生常三と改名します。また、次女の家庭も彼の伝統を引き継いでいます。

逸話

宝生新の愛犬家としての一面も特筆すべきです。彼は犬の飼育を楽しんでおり、ある時、弟子が彼の子犬を風呂敷に包んで電車に乗せ、夏目漱石のもとへと運びました。漱石はその犬を引き取ったのですが、彼はその出来事を後年に至るまで忘れてしまったとも言われています。

著書

宝生新はその業績をまとめた著書『宝生新自伝』を1949年に刊行しました。これにより、彼の生涯や芸に対する考えが広く知られることとなりました。

映像資料

また、能楽において、彼の演技を収めたDVDも存在し、例えば『能楽名演集 金春流「葵上」櫻間金太郎（弓川） 宝生新／「実盛」櫻間道雄 森茂好』はその一例です。

宝生新の影響は、今でも日本の能楽界に深く根付いており、彼の業績や教えは次世代の能楽師たちへと受け継がれています。

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