室内

室内

「室内」という言葉は、建物や乗り物の内部空間を指し、屋外と対比される概念です。また、音楽用語としては、小規模な部屋での演奏に適した「室内楽」があります。かつては、家具・木工・インテリアに関する雑誌『室内』も存在していました。

本稿では、エドガー・ドガによって描かれた絵画『室内』(別名『強姦』)について解説します。

エドガー・ドガの絵画『室内』

エドガー・ドガの『室内』(フランス語: Intérieur)、別名『強姦』(フランス語: Le Viol)は、1868年から1869年にかけて描かれた油彩の絵画です。ドガの主要な作品の中でも特に謎めいた作品とされ、ランプの光の下で、男と服を脱いだ女性が対峙する緊張感あふれる場面が描かれています。

背景

ドガは、初期には歴史的な主題を描いていましたが、次第にリアリズムへと傾倒していきました。『室内』は、そうした転換期に描かれた作品です。当初、ドガは『室内』を1869年のサロンに出品する予定でしたが、実際には1905年になって初めて公開されました。ドガ自身は、この作品を「わたしの風俗画」と呼んでおり、自作の中でも異例な作品と捉えていたことを示唆しています。

解釈

『室内』は、近代生活を描いたドガの作品の中でも、特に演劇的な構図を持っていると言われています。美術史家たちは、その舞台裏で操られているかのような性格に着目し、作品の文学的な出典を特定しようと試みてきました。

様々な自然主義の小説が候補に挙げられてきました。例えば、ジョルジュ・リヴィエールはルイ・エドモン・デュランティの小説『フランソアーズ･ド･ケノアの闘い』を、また、エミール・ゾラの『マドレーヌ・フェラ』の一場面が絵画の要素と一致するという指摘もありました。

1976年、美術史家のセオドア・レフは、ゾラの小説『テレーズ・ラカン』の一場面を描いているという説を提唱しました。この説は広く受け入れられていますが、異論も存在します。

『テレーズ・ラカン』は、若い孤児テレーズが、おばによって病弱な息子カミーユと結婚させられる物語です。テレーズはカミーユの友人ローランと不倫関係になり、カミーユを殺害する計画を実行します。しかし、結婚後、テレーズとローランは、自分たちの関係が犯罪によって蝕まれていることに気づきます。レフは、小説の第21章に登場する場面が、『室内』に描かれた場面と符合すると指摘しました。

しかし、フェリックス・クラマーは、レフの説に異議を唱え、ドガの構図のより明白な出典として、ポール・ガヴァルニによるリトグラフを提示しました。ガヴァルニは、ドガが敬愛していた画家であり、ドガはガヴァルニのリトグラフを約2000点も収集していました。クラマーは、ガヴァルニのプリントと『室内』との類似点を指摘し、ガヴァルニのプリントが娼婦を描いていることから、『室内』も売春と性的暴力の余波を描いている可能性を示唆しました。

影響

『室内』は、ドガの弟子であるウォルター・シッカートの作品に影響を与えました。特に、シッカートの『カムデン・タウンの殺人』シリーズや『アンニュイ』には、『室内』の影響が見られます。ドガはシッカートとの会話の中で、『室内』を風俗画と呼びました。シッカートの男女が共にいる描写は、ドラマチックな緊張感と物語の曖昧さが特徴であり、『室内』と同様の要素を備えています。

『室内』は、その謎めいた主題と演劇的な構図によって、美術史家や文学研究者など、多くの人々を魅了し続けています。作品の解釈は未だ定まっておらず、様々な議論が展開されています。

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